今更…<総優> 37.
優紀が、困惑するには、理由が有ったのだ。
優紀にとって、総二郎は、“婚約者だ‼”と、未だ、思え無かったのだ。
勿論、高校生の頃の優紀にとって、総二郎に対する想いは、憧れから、何時の間にか?
好意を感じて居たのだ。
だが、其の優紀の想いは、総二郎に寄って、自身を避けられた事から、一旦、途切れてしまったのだ。
其れは、“総二郎さんが、私(優紀)に対する想いを、伝えてくれる程には…。”と、言う事が、前提だったのだが…。
優紀にとっては、未だ、総二郎への想いを、再生出来て居なかったのだ。
だから、優紀は、困惑という寄り、戸惑いの方が強かったのかも知れない。
実は、そんな優紀には、総二郎に対して、遠慮が有ったのだ。
其れは、高校生の頃の優紀が、総二郎に抱いて居た思いと同じだったのだ。
高校生の頃の優紀は、何時も、総二郎には、遠慮がちだったのだ。
其れは、高校生の頃の優紀にとっては、“西門さん(総二郎)には、迷惑を掛けたく無い。”と、いう思いが前提に有ったからだったのだ。
其の優紀の思いは、何時まで経っても変わる事無く、今でも、持ち続けて居た優紀だったのだ。
だから、総二郎が言う様に…。
優紀自身…。
“総二郎さんが、頼んない。”と、思った事は、一度も無かったのだ。
なので、優紀は、総二郎の言って居る意図が視えて居なかったのだ。
だから、困惑する優紀だったのだ。
だが、何も返答もして来ない優紀に不安に成り、総二郎は、優紀に、訊き始めるのだった。
「優紀…。
俺は、優紀を怒ってるんじゃねぇんだ。
俺は、優紀が抱えてるモノを、一緒に、解決して行きてぇだけ何だ。
其の事を、司だけが知って居た事は、俺にとっては、汚点でしかねぇ。
勿論、司が、優紀にしてくれた事は、牧野の為で在って…。
其れが、強いては、優紀の為に成った。
其処には、俺の存在が、優紀には無かったってだけだろ?
だが…。
今の俺は、優紀の婚約者だ。
だから…。
今の俺は、何でも、優紀にして遣れる。
其の事が、今の俺は、素直に、嬉しいんだよ。
だから、俺にさせてくれよ‼
優紀と一緒に、何かを遣り遂げてぇんだよ‼
其の事が、将来の俺と優紀の為に成る。
そうだろ?
優紀…。」
優紀は、総二郎が、其処まで、思ってくれて居たとは、考えても視なかったのだ。
だが…。
優紀は、総二郎に甘えて良いのか?
迷って居たのだ。
だから、優紀には、言えた言葉だったのだろう。
「総二郎さん…。
私は、総二郎さんに甘えても良いんですか?」
此の時の総二郎は、優紀の問い掛けに、『??』だったのだ。
総二郎にとっては、首を捻る事しか出来なかったのだ。
だから、総二郎にとっては、言えた言葉だったのだろう。
「はぁ~??
優紀…。
俺の話しを、ちゃんと聞いてたか?
じゃあ、反対に訊く?
優紀は、俺以外で、甘えられる男が居んのか?」
だから、優紀は、即答したのだ。
「いいえ、居ません。」
なので、総二郎も、即、返答したのだった。
「だろ?
じゃあ、司には、学費を借りる事が出来て、俺には、学費の事は、内緒なのか?
否、そうじゃねぇ‼
俺には、優紀の為に、学費を返す事は許されねぇのか?」
こんな事を、総二郎から、そう言われてしまえば…。
優紀は、返答に困るのだった。
何故なら…。
優紀は、司から学費の援助をしてもらう際にも…。
実は、一旦は、断りを入れて居たのだ。
だが…。
つくしから、優紀の話しを聞き付けた司は、つくしが、遠慮する事無く、今後も、優紀と、親友で居られる事を望んだのだ。
だからこそ、司は、優紀に援助する事を考えたのだ。
何故なら…。
優紀が助産師に成る事は、“私の(つくし)の要望…何だ。”と、司は、つくしから聞いて居たのだ。
だからこそ、司は、優紀が、遠慮しない様に巧みな技で、優紀を諭して居たのだった。
此れこそ…。
長年(約10年)、つくしと付き合って来た司ならではだったのだ。
つくしの事が分かっている司だからこそ…。
優紀をも、諭せたのだった。
【其の時の司が、優紀に伝えた言葉とは…。
「松岡が、助産師に成る事は、つくしの要望だと聞いた。
つくしが、松岡に、要望した事を、今後、つくしにしても、松岡にしても…。
お互い、後悔する事のねぇ様に…。
俺に、援助させてくれぇか?
松岡が、俺に、気兼ねすると言うのなら…。
“貸しと言う事でも良いんじゃねぇか?”と、俺は、思ってるんだが…。
取り敢えず、大学院には、全額、俺が、払って於く。
で、返せる時に、返してくれたら良い。
何年掛かっても、利子を取るつもりもねぇし…よ。」 】
なので、其の時の優紀は、親友としてのつくしとの将来の為にも…。
司に、学費を借りる事にしたのだった。
だからこそ…。
“何年、掛かっても良いから…。
完済しよう‼”と、思って居た優紀だったのだ。
勿論、其の当時の優紀にして視れば…。
助産師の仕事を辞める気等…。
毛頭無かったのだ。
否…。
定年まで、勤め上げる気で居たのだ。
だから、自身が、道明寺総合病院の産婦人科で、勤めている以上…。
自身の身元もしっかりして居るので、“大丈夫だ‼”と、考えて居たのだ。
だから、優紀にとっては、司に甘えたとも思って居なければ…。
総二郎に内緒にして居たとも思って居なかったのだ。
優紀は、総二郎に言わなかったのでは無く…。
実は、優紀には、言う必要性を感じて居なかったのだ。
其れに、敢えて云う成らば…。
司にとっての優紀は、つくしのおまけみたいなモノだったのだ。
其の事に関しては、優紀も、納得済みな話しだったのだ。
だから、実の事を言うと…。
其処まで、総二郎が、学費の事で、拘って居る理由が、優紀には、分かって居なかったのだ。
総二郎にとって、如何いう理由で在れ、好きな女が、自身以外の男から、学費を借りている時点で、無いのだ。
否…。
“『優紀の男』としての立場が無い。”と、考えて居たのだ。
所謂、“俺(総二郎)自身の『沽券に関わる』。”と、考えて居たのだ。
だからこそ…。
総二郎自身の手で、優紀の学費を返済したかったのだ。
だが、優紀にとっては、其の『男としての立場』というモノに関して、理解しがたいモノが有ったのだ。
だからこそ、総二郎に、言ってしまった言葉だったのだ。
其れに対しての総二郎の返答の問いの言葉には、優紀は、困惑しか無かったのだった。
だが、敢えて、優紀は、総二郎に伝えたのだった。
「総二郎さんに、内緒にして居たつもりは有りません。
総二郎さんに言う必要性を感じて居なかっただけです。
でも、総二郎さんが、学費の件を聞いてしまったので有れば…。
話しは、違いますよね?
だから、私は、総二郎さんに甘えても良いのか?
訊いただけです。」と…。
そんな優紀の言葉に、総二郎は、ニヤッと、笑った事は言うまでも無いのだ。
そして、総二郎は、優紀に伝えるのだった。
「ああ。
俺に甘えとけ‼」と…。
そして、総二郎は、思うのだった。
“やっぱり、優紀は、素直だよな‼”と…。