もし、全員、幼馴染だったら…<F4&T4> 30.
其の後…。
漸く、着て行く服も決まり、総二郎と優紀は、『Dressing room』を出たのだった。
だが、総二郎は、優紀にとっては、身も蓋も無い様な言葉を、店長に、言われてしまったのだ。
「優紀が、今日、着て来た服と、今日、買った全ての服は、後ろに居るSPに渡して置いて
くれ。」と…。
しかも、今まで、総二郎が、優紀を呼ぶ時の『優紀ちゃん』では無く…。
店長の前で、『優紀』と、言って居たのだ。
優紀自身…。
テンパっても、仕方ない様な状況だったのだ。
そして、此の後からの総二郎は、優紀を呼ぶ時の呼び名を『優紀』に変えたのだった。
其れに、実は、此の時の店長だけでは無く…。
店長の後ろに控えて居た店員でさえも…。
そんな総二郎からの要望には、驚愕して居たのだ。
何故なら…。
今迄、此のブランドショップに、総二郎が連れて来た女性に対して、総二郎は、店長に、そんな要望を、言った事が無かったのだ。
今迄の総二郎なら…。
女性が選んで、試着して、気に入れば…。
さっさと、代金を支払い、此の場で、女性とは、別れて居たのだ。
其れなのに…。
此の時の総二郎は、『後ろに居るSPに渡して置いてくれ。』と、言って来たのだ。
だからだったのだろう。
此の時の店員は、そんな総二郎と優紀の事を、詮索して居たのだった。
「ちょっと、如何思う?
今の西門様と、あのお嬢様…。」
「“如何思う?”って…。
そう言う事でしょ?」
「やっぱり…。
そうよね?
って事は…。
西門様は、あのお嬢様に、本気って…事かしら?」
「西門様は、本気みたいね。
でも、あのお嬢様は、如何かしら?
西門様が為さる事に、一々、戸惑って居る様な様子だったけど…。」
そして、総二郎と優紀が去った後の此のブランドショップ内では、そんな話しが、繰り広げられて居たのだった。
勿論、店長は、呆れる様に、店員を窘めて居た事は言うまでも無いのだが…。
だが、当の店長でさえ…。
総二郎の優紀への対応には、些か、面食らって居た事は事実だったのだ。
何故なら…。
何時も、店長は、同じ言葉を、総二郎に、確認するのだ。
「西門様…。
お嬢様とご一緒に、お着替え為さいますか?」と…。
何時もの総二郎なら…。
店長が、総二郎に、確認した言葉にも、応じる素振りは見せないのだ。
だが、此の時だけは…。
優紀の時だけは…。
店長からの確認の言葉に、総二郎は、優紀が先に入って居た『Dressing room』内に、入って来たのだ。
そして、『Dressing room』の中では、総二郎と優紀の二人だけの一緒の時間を過ごして居たのだった。
此の時の店長にして視れば…。
かなりの間を開けて、総二郎に、声を掛けたつもりだったのだ。
だが、此の時の総二郎は、まだ、『Dressing room』から出る事を拒んだのだ。
だからこそ、此の時の店長が、驚愕しても可笑しくない事案だったと云えたのだった。
しかも、『Dressing room』から出て来た時の総二郎は、上機嫌だったのだ。
そして、総二郎からの言葉に驚愕して居た此の時の優紀は、テンパっていたという訳だったのだ。
そして、総二郎は、優紀に言って除けるのだった。
「優紀…。
今から、バイクに乗って出掛けようぜ‼」と…。
既に、ブランドショップを出る頃から、優紀とは、恋人繋ぎに手を繋いでいた総二郎は、バイクに、優紀を乗せる時点でも、未だ、自身の手を、優紀の手から放せずに居たのだった。
何故なら…。
総二郎は、優紀が、総二郎自身から逃げる様な気がしていたからだったのだ。
だからだったのだろう。
総二郎は、優紀の手を取ってバイクに乗せた後でも、メットを被ろうとして居る優紀の身体を、未だ、支えて遣って居たのだ。
此の時の優紀を見詰める総二郎の目付きは、エロかったのだが…。
優紀自身は、此の時のエロい総二郎の目付きには、一切、気が付いて居なかったのだ。
所謂、今迄の優紀には、男性と、こういうシチュエーションに成る様な事は、一切、無かったのだ。
何故なら…。
今迄の優紀は、お花(華道)にしか興味が無かったのだから…。
そして、漸く、メットを被り終えた優紀の身体から、自身の手を放した時の総二郎は、自身も、バイクに乗り、メットを被る前に、優紀に言って除けるのだった。
「優紀…。
今から、夜の海にでも行って視るか?」と…。
だが、未だに、夜の海に行った事の無い優紀は、不安に思うのだった。
“夜の海は、何だか、怖く感じるんだけど…。
大丈夫なのだろうか?”と…。
所謂、優紀は、“夜の海は、怖い。”と、いう話しを聞いた事で、想像の範疇だったのだが…。
勝手に、不安に感じるのだった。
そんな優紀の様子を、察知したで在ろう総二郎は、優紀に、更に、言って除けるのだった。
「俺が、優紀の傍に居るから…。
大丈夫だろ?」と…。
なので、取り敢えず、総二郎は、メットを被り、バイクを走らせるのだった。
勿論、総二郎が、運転するバイクの後ろから、SPの車が、就いて来て居る事は言うまでも無いのだが…。
そして、海に着いた時の優紀は、幻想的な風景に、酔い痴れるのだった。
実は、総二郎と優紀の背後から、バイクのライトで照らされた海を、優紀は、観て居たのだった。
なので、此の時の総二郎は、そんな優紀の背後から、また、優紀を抱き締めたのだった。
所謂、『Back Hug』を、また、優紀に仕掛けた総二郎だったのだ。
そして、優紀に声を掛けた総二郎だったのだ。
「なぁ~、優紀…。
夜の海に、来て良かっただろ?
優紀は、夜の海は、初めてだったのか?」と…。
なので、海を観乍ら、うっとり気味の優紀は、そんな総二郎に、返答するのだった。
「はい。
初めてです。
今迄は、家族で、昼間の海に遊びに来た事は有りましたが…。
こんな形で来た事は有りませんでした。
幻想的な海を観れて…。
嬉しいです。
西門さん…。
私を、此処に連れて来て下さって、有難う御座います。」と…。
だからだったのだろう。
総二郎は、優紀に、声を掛けるのだった。
「優紀…。
kissして良いか?」と…。
だが、此の時の優紀は、総二郎のそんな言葉が、頭に入って来ない程…。
驚愕するのだった。
此の時の総二郎が、優紀を揶揄って居るとは、優紀自身、思って居なかったのだが…。
其れでも、総二郎の顔付きを観る事の出来ない今の優紀の状況では、総二郎が、どんなつもりで、優紀に、そんな事を言って居るのか?
図り切れて居なかったのだ。
だからだったのだろう。
優紀は、総二郎の顔付きを観たいという気持ちから、後ろを振り向こうとしたのだった。
だが、総二郎は、そんな優紀の行動が、“了承してくれた。”と、勘違いを起こし…。
半回転させた優紀に、総二郎は、kissしてしまったのだ。
しかも、最初は、唇と唇を合わせるだけの軽いタッチのkissだったのだが…。
自然と、総二郎にも、熱を帯びて来たかの様に…。
深いkissに、変わって居たのだった。
此の時の優紀は、驚愕で、抵抗すら、出来ずに居たのだった。
しかも、総二郎の手は、優紀の頭と腰を支えて居たのだ。
優紀は、総二郎から逃げられない状況と成って居たのだった。
そして、何故か?
優紀の頬には、自然と、涙が、流れ始めたのだった。
此の涙の意味自体…。
優紀には、分からなかったのだ。
だが、此の時の総二郎は、そんな優紀の涙に、驚愕するのだった。
何故なら…。
総二郎が、kissを仕掛けて、涙した女性は、今までに居なかったのだ。
寧ろ、“俺(総二郎)のkissは、女性のハートを、百発百中で、落として来た。”と、総二郎自身、自負して来たのだ。
なのに…。
本気の優紀には、泣かれてしまったのだ。
此の時までの総二郎は、優紀にkissを仕掛ければ…。
“優紀の気持ちは、俺(総二郎)に傾く。”と、自負しても、居たのだ。
だからこそ、優紀にkissを仕掛けた総二郎だったのだ。
総二郎は、思うのだった。
“もしかして、俺の策略は、裏目に出たのか?”と…。
そして、総二郎は、未だ、涙目の優紀に、声を掛けるのだった。
「そんなに、嫌だったのか?
俺のkissが…。」と…。
「………」
だが、此の時の優紀は、何も、発する事が出来ず、唯、首を左右に、横に振るだけだったのだ。