お嬢だとしたら…<F4&T4> 8.
優紀は、【華道 花咲流 生け花展】が開催されるに辺り、花咲流 家元で在る優紀のお祖母様より、命(めい)を受けた。
「優紀、今回の生け花展の開催に際して、粗相は出来ないの。
意味は分かるかしら?」
「私の家元としての素質を見られて居るって事ですか?」
「そうよ、優紀。
絶対、成功させなければならないの。
遣れるわよね?」
「最善は尽くします。」
優紀は、お祖母様にああいう風に言ってはみたものの、不安でしかなかった。
そんな或る日…。
優紀は、講義終了後のお昼休みに、つくしと大学内で会い、F4ラウンジに連れて来られた。
優紀の顔色を見たつくしは心配に成ったからで在った。
実は、つくしが司の婚約者に成った事で、司が仕事等で居ない時でも、“F4ラウンジは自由に使って良い。”と、司よりお達しが出ていたのだ。
勿論、つくしが居る時は、T3も了承が出ていたのだった。
「優紀、大丈夫?
顔色が蒼褪めてるよ。」
「うん、大丈夫って、言いたい処だけど…⁉」
「何…?
何か有ったの?」
優紀は『心 此処に在らず』の状況の様子だった。
「えっ??」
「本当に、如何しちゃったのよ、優紀?」
其処に、丁度、あきらと総二郎が、F4ラウンジに入って来る所だった。
総二郎があきらの行く手を阻んだ事で、つくしと優紀の会話を、陰から聞いているF2だった。
優紀は、観念したかの様に、つくしに話しし始めた。
「う~ん、プレッシャーで圧し潰されそうなの。」
「何か、有るの?」
「今度ね、生け花展が開催されるんだけど…。
その生け花展は私の家元としての素質が兼ね備わっているのか、見られて居るらしい
の。
他流派の家元の方々から、見られて居るのよね。」
優紀は、思いっ切り、大きな溜息を付いていた。
「はぁ~⤵。」
「えっ、まだ、私達、大学1年でしょ?」
「私達の世界は、年齢とかで判断されるものじゃないからね。
初めて、ママが逃げ出したかった気持ちが分かった様な気がするよ。」
「逃げ出すの?」
「逃げ出させるものなら、逃げ出したい‼
ママみたいに相手も居なければ、逃げ出す勇気も無い。
って、成れば、当然、逃げ出しても無駄でしょ。」
「………、優紀っ⁉
でも、優紀は、華道が如何してもしたくて始めた訳じゃないでしょ?」
「そうだね。
“伝統を守る為には、継承者が必要だ。”って、言われれば、刃向かう事が出来なかった
んだよね。
ママには、“無理しなくて良い。”って、言われたけど…。」
「で、如何するの?」
「うん、お稽古は始まっているんだけど…。
ダメ出しばかりで、今日もお稽古ってだけで、“帰りたくない。”って、思うんだよ
ね。」
「私で良かったら、優紀を支えるよ。」
「うふふ、有難う、つくし‼」
総二郎は、居た堪れなかった。
総二郎は、優紀と同じ様に、伝統を継承していかなければ成らない身…。
総二郎は、『女遊び』をする事で、一瞬でも、家(西門家)の事と伝統の継承のプレッシャーから逃れていた。
だが、優紀にはプレッシャーから逃れられる術が無い。
『伝統の重みを知っている俺なら、優紀ちゃんを支えられる。
俺は優紀ちゃんを支えたい。』
総二郎は、やっと自分自身の気持ちに気付けた。
「あきら、悪ぃ‼
俺、優紀ちゃんに話さなければいけない事が有んだ。
中に入るわ。」
「了解‼」
総二郎は、意を決して、優紀へと向かった。
つくしが居ても構わないと思える程に…。
あきらは、背後から、そっと見守った。
“やっと、自分自身の気持ちに気付けたのかよ、総二郎⁉”と、心の中で苦笑しながら、あきらは、陰から、総二郎を見守っていた。
総二郎は、優紀の前に立った。
つくしと優紀は、吃驚していた。
総二郎は、意を決したように、優紀に言って除けた。
「優紀ちゃん、俺が優紀ちゃんを支えるよ‼
俺じゃあ、ダメか?」
「えっ??」
あきらは、総二郎の背後から、“そりゃあ、優紀ちゃんは、そう成るわな‼”と、思っていた。
つくしは、総二郎の行き成りの言葉に面食らっていた。
「西門さん、行き成り、何?」
「悪ぃ、牧野は黙っててくれるか?」
「………」
つくしはその総二郎の言葉に不貞腐れていた。
「優紀ちゃん、俺も優紀ちゃんと同じ、伝統の継承者だよ‼
少なくとも、俺は、優紀ちゃんの苦しさは分かると思う。
俺が優紀ちゃんを支える事はダメか?
俺は優紀ちゃんを支えられる自信が有るよ‼」
優紀は、総二郎の思惑が分からないでいた。
「西門さんっ??」
「だから、優紀ちゃんも俺を支えて欲しい‼」
「えっ??」
総二郎は、佇まいを正した。
そして、優紀に声を掛けた。
「優紀ちゃん、俺と付き合って欲しい‼」
優紀は、驚愕顔に成って居た。
「えっ??」
「俺は優紀ちゃんが好きだ‼」
優紀は嬉しかった筈なのに、如何答えたら良いのか、一瞬、分からなかった。