俺を見てくれ‼…<つかつく> 6.
司は、つくしの婚約者が、つくしとの婚約を破談にさせた後も、夜中に、つくしの病室に訪れる事は、ずーっと、止めなかった。
否、止める事が出来なかった。
いつか、司の為に、つくしは、目覚めてくれると、何故か、そう、思って居た司だった。
今までの司は、普段、夜中に見舞っても、つくしに声を掛ける事はしなかった。
今までは、何故だか、声が出せなかったのだ。
だが、その日は、何故か、つくしの頬を摩りながら、つくしに声を掛けていた。
多分、司は、つくしの婚約が破談に成ったという情報を知ったからだろう事は、推測出来た。
つくしの婚約が、破談に成ったという事が、司に何かを突き動かせたのかも知れなかった。
「なぁ、つくし。
もう、1年も、寝たままだろ?
もう、そろそろ、起きても、良いんじゃねぇのか?
俺が、つくしを虐めたから…。
つくしは、俺を虐めてんのか?
頼むよ、つくし…。
俺を見てくれ‼
俺だけを見てくれ‼」
司の悲壮な叫びは、今は、つくしには、届かない。
だが、つくしは、1年間の『眠り姫』の間、司の夢を見続けて居た。
一番楽しかった頃の夢を…。
其の頃の司の歳は、26歳に成ったばかりだった。
という事は、其の頃のつくしの歳は、25歳に成って居た。
司にとって、此の8年間は、何だったのか?
そう思いながら、つくしの病室に訪れて、更に、1年が経っていた。
つくしが、『眠り姫』に成って、2年が経っていた。
現在の司は27歳、つくしは26歳に、それぞれ、成ろうとしていた。
そんな司にとって、唯一、収穫だったのは…。
つくしの弟 進の事だけだった。
司が日本に帰国して帰って来て直ぐ位の頃に、偶然、司と進は再会していた。
高校生の頃の司も、つくしの弟の進を気に入っていた。
また、進も、司を尊敬していた。
進は、何時かは、司の様に、『モノがはっきり言える男に成りたい』と、思って居た。
また、中学生の頃の進は、司の事を頼れるカッコいい兄貴の様な存在に思って居たのだった。
だから、司と、姉で在るつくしとが、“こう成る運命だったのか?”と、寂しく思って居た進だった。
進は、司とつくしが、英徳学園で、知り合って居る事は知っていたが…。
如何言う結び付きかまでは、知らされて居なかったのだ。
だから、簡単に離れたのだろうと、思って居た進だった。
そして、進が大学4年に成って居た頃…。
進が、就職説明会に参加していた帰りにばったり、司と再会したのだった。
そして、司は進を誘って、メープルのカフェの個室で話ししていた。
「弟、つくしの件は、済まない。」
司は、頭を下げていた。
進は、吃驚していた。
進が知っている司は、頭を下げる様な男では無かったのだから、無理も無かった。
だが、進は、司に、進の名前を、未だ、覚えてもらえて居なかった事に、密かに、ショックを受けていたのだった。
「あの~、進です。」
「おお、進っ‼」
進は、司から、名前を呼ばれて、照れてしまっていた。
だが、進は、司に、照れながら、言って居た。
「姉の事は、仕方なかった事、何ですよね?」
「否、うち(道明寺HD)の落ち度だ‼」
「………」
進は、何も知らされて居なかったので…。
驚愕するしかなかった。
司は、進の様子を見て居て、話しを変えて居た。
「進、今日は、スーツを着て…。
何処に行ってたんだ?」
「あぁ、就職説明会です。」
「そうだったのか?
今は、何年だ?」
「4年です。
姉の事が遭ったので…。
中々、就職活動に集中出来なかったんですが…。」
「何処の大学だ?」
「○○(日本最難関国立)大学です。
一応、経済学部です。」
「そうか?
進、俺の下で働かねぇか?」
「えっ??」
進は、眼を丸くして、吃驚して居る。
司は、其の進の顔の表情に、懐かしさを感じて居た。
高校生の頃のつくし、そのままだったのだ。
“やはり、つくしと進は、姉弟、何だな‼”と、思って居た。
だが、一応、進には、話しすべき事を話ししようと思って居た。
「そんな、驚く事か?
本来なら、進は、俺の弟に成るべきだったろ?
だから、俺が、信用出来る男が、俺の下に居れば、安心して、執務出来るって訳だ‼
だから、俺の下で、働かねぇか?」
きょとんとしている進は、何時もの事なので、司は、放って置いて、先に、話しを進めていた。
「うち(道明寺HD)には、インターシップ制度が有って、大学4年から対応してる。
俺の権限で、進を今すぐにでも、受け入れたい‼
如何だ、進?
遣ってみる気はねぇか?
大学との両立も可能だ。」
「………」
尚も、進は、如何答えたら良いのか?
迷っていた。
“こんな時、傍に、姉ちゃん(つくし)が居れば…。”と、思う、進だった。