泣かずに居られるのなら…<つかつく> 10.
何もかも、処理した状態で、後腐れなく司は、つくしを日本に連れて帰れる事を喜んで居た。
司は、何もかも、クリアな状態にしたかったのだった。
つくしの気持ちは、度外視して…。
そして、日本への帰国の準備が整い、つくしを病院から飛行機(PJ)に運び出す際も、ストレッチャーが在るにも拘わらず…。
司は、つくしを抱き上げて運び出し、リムジン内でも、飛行機(PJ)内でも、離陸・着陸態勢の為、シートベルトを着用しなくてはいけない時以外は、ずーっと、司は、つくしを抱き締めて離さなかった。
その姿が…。
司の苦悩を見て取れ、西田は、心苦しかった。
漸く、日本に帰国して帰って来た司とつくしと西田だった。
先ずは、つくしの病状も、心配する処だが…。
つくしの身体の状態を調べなくては成らない為、“ストレッチャーに乗せて運ばせて欲しい。”と、ドクターは、司に懇願していた。
実は、つくしは、倒れてから、高熱が数日続き、意識が遠退く状態に陥り、意識が回復して居なかったのだ。
「司様…。
つくし様を、至急、運ばなくては成りません。
司様のお気持ちは、十分、理解致しますが…?
このままでは、つくし様の病状も心配で御座います。
私共に、お任せ下さいませ?
如何か、ご了承下さいませんか?」
司は、ドクターの言葉にも、耳を傾け様としなかった。
これ以上、つくしとは、離れる事が出来ない心情の司だったのだ。
「何故、誰も、俺の気持ちが分かんねぇんだ?
つくしとは、もう、離れる事は、出来ねぇだ‼」
ドクターは、尚も、司に懇願していた。
「司様…。
つくし様をお助けしたいので在られるのなら、一刻も争わなくてはいけません。
如何か、私共にお任せ下さいませ。
つくし様は、高熱が続き、かなり、衰弱されております。
これ以上は、命の補償は御座いません。」
ドクターは、医者の立場から、司を諫めていた。
西田も、ドクターの指示に従う様、司に、懇願し始めた。
「航坊っちゃんに、つくし様を会わせられるのでは無かったのですか?
航坊っちゃんの為にも、此処は、ドクターにお任せ下さいませ。」
「………、うう~ん(泣)‼」
司は、つくしを抱き締めながら、男泣きをし始めていた。
息子の事を言われてしまえば、指示に従うしかない司だった。
司は、つくしをストレッチャーに乗せて、ドクターに一言、言って除けていた。
「俺も、つくしと一緒に、つくしの傍に居る。
其れ位ぇは、許されるだろう?」
「………、賜わりました。」
ドクターは、思案したが…。
司の取り乱した状態を見れば、傍に居る事だけは、了承した。
その事に寄り、司も道明寺総合病院専用のドクターヘリに搭乗して、道明寺総合病院まで、司は、つくしの手を握り、つくしの頭を頻りに撫でていた。
そして、道明寺総合病院に到着した頃には、準備が為されて居て、至急、つくしの検査が始まった。
その間、司は、院長を呼び出し、つくしの為に特別室の手配と、つくしは、司の配偶者として、手厚く扱う様に、指示を出した。
また、司は、主治医を、司の良く知る中年女医にする様に、指示を出して居た。
司は、男性ドクター、しかも、若手の男性ドクターには、つくしを触らせたくなかったのだった。
そして、つくしの検査が済み、つくしは、ストレッチャーに乗せられて、特別室に入って来た。
そのまま、つくしは、ベッドに乗せられて、静かに眠りに入って居た。
司は、西田に、伝えた。
「つくしが、入院して居る間は、俺も、此処(道明寺総合病院の特別室)が、俺の住まい
だ‼
西田、タマに伝えてくれ‼
“衣類等、必要な物を運んで欲しい。”と…。
其れと、西田…。
航には、“パパは、暫く、ママの所に居る‼”と、伝えてくれ。
頼んだぞ‼」
西田は、司にこれ以上、何を言っても無駄な事は、承知していたので、引き下がる事にした。
「賜わりました。」
しかしながら、司の父親で在る 道明寺HD 会長には、此の件の事は報告しようと、考えて居た。
それから、つくしが、目覚めるまで、1週間を要していた。
その間も、司の住まいは、道明寺総合病院の特別室…。
司のベッドは、キングサイズのベッドに寝ているつくしの横だった。
司は、つくしを抱き締めて寝れる至福の毎日を過ごして居た。
つくしが、目覚めた時は…。
つくしの怒り(イカり)を真摯に受け止めざるを得ない司が、其処には居たのだった。