戸惑い…<つかつく> 3.
椿は、静に訊いて来た。
「静ちゃん…。
さっきは、何処に行こうとして居たの?」
静は、椿に隠せない事は、十分、理解して居たので、素直に白状する事にして居た。
「実は、道明寺HDの『party』に招待されて居て、つくしも出席するんですけど…。
ショップ巡りして、ソワレを見繕って居た所だったんです。」
椿は、其処で、閃いてしまった。
「うち(道明寺HD)の『party』の出席の為なら…。
じゃあ、私にも、選ばせて…?」
椿は、つくしに懇願する様に言って来た。
静は、面食らっていた。
だが、つくしは、椿に了承してしてしまっていたのだ。
「お願いします。」と…。
だから、静は、其処で、椿に話しするつもりで居た。
所謂、静は、つくしが、ソワレをドレスフィッテングして居る間に、椿に釘を指すつもりで居たのだ。
そして、椿が贔屓にして居るブランドのショップに、静とつくしと共に入った椿は、つくしに似合うソワレを宛がう様に、スタッフに申し伝えて居た。
そして、つくしは、取り敢えず、何着か?
ショップのスタッフに、ソワレのドレスフィッテングを促されていた。
だからだったのだろうか?
静は、其処がチャンスとばかりに…。
静は、椿に声を掛けていた。
「椿さん…?
つくしに、司を宛がおうとしてません…?」
「………」
椿は、静の顔を見て、驚愕顔に成っていたので、言葉が出て来なかったのだ。
何故なら、椿は、静に、バレて居る事を悟ったからだったのだ。
だが、静は、司の普段の凶暴振りを知って居るので、つくしを司に宛がおうとしてして居る椿に、懇願する様に、話しを進めて居たのだ。
「つくしは、純粋で初心な娘(こ)…何です。
こう言っては、何ですが…。
司の様な、凶暴な男性には、つくしは、相応しく在りません。」
だが、椿は、静の言葉を聞いて、静に反論するかの様に、飄々と、答えていた。
「あら、司には、つくしちゃんの様な初心な娘(こ)の方が似合って居ると思うの?
静ちゃんは、『つくしちゃん』には、司って…反対かしら?」
静は、静自身…。
つくしには、『司』は無いと思って居るのだ。
だから、静は、椿に即答していた。
「如何考えても、つくしには、司は、無いでしょ?
司の様な男性に、つくしを宛がおうとする事は、道明寺家にとって、何か得るモノが有
ると、椿さんが判断したからですよね?
椿さんにも分かって居る事…何ですよね?
何故、つくしを司に宛がおうとするんですか?」
椿も、そんな静に即答していた。
「私が、つくしちゃんを気に入ったからよ。
其れじゃあ、ダメかしら…?」
そんな、話しをして居る所に、つくしが、先ず、1着目のドレスフィッテングを済ませて、フィッティングルームから出て来た。
其のつくしの姿を見た椿は、つくしが、司の好みで在ろう事は、推測出来た。
俄かに、椿が、ほくそ笑んで居る事に、静は、気付いて居たのだった。
静は、此のまま、フランスに留学する事が出来るのか?
不安に成っていた。
そして、一方の椿は、可愛らしく成ったつくしに、褒め称えるのだった。
「つくしちゃん…。
凄く、似合ってる。
可愛らしいわ‼」
つくしは、満更じゃない様子で、椿の言葉に挑発される様に、顔を赤らめていた。
そんなつくしを見詰める椿は、納得していた。
一方の静は、そんなつくしに苦笑いだった。
だから、後日、静は、椿に会ってもらう様に伝え、つくしに挑発しない様に伝えて居た。
「椿さん、お願いが有るんです。
つくしは、ご覧の通り、NYで育っている割には、初心な娘(こ)…何です。
だから…?
つくしを、此れ以上、挑発しないで下さい。」
椿は、静の言葉に、一瞬、怒りを覚えたが…。
静は、司の生い立ち全てを知っている。
だから、椿は、静が、椿に言って来る言葉の意味を理解したのだ。
「静ちゃんの言いたい事は…。
つくしちゃんには、直接、私から、司をプッシュしなければ良いって事よね?
司とつくしちゃんが、自然な形で会うなら、良いって事よね?」
静は、椿の挑戦的な言葉にも、狼狽える所を見せずに言って除けて居た。
「私は、年明けから、渡仏する予定…何です。
此のままだとつくしが心配で、つくしを日本に置いて、私だけ、フランスに留学って訳
にはいかないと思うんです。
私にとって、つくしが私の従姉妹の前に、つくしは、私の妹の様に可愛いんです。
こう言っては、何ですが…。
司の様な男性に、つくしを宛がおうとして居る椿さんを、私は、許せないんです。」
「………」
椿は、静の言葉に何も言えなかった。
椿にしても、静同様…。
もし、椿が、静の立場なら、静の様にそう思う事は、必然的と言えたからだった。
だが、司は、椿にとって、掛け替えのない弟には、変わりなかった。
勿論、椿にして視れば…。
静から、司が、どんなに『凶暴な男』だと言われ様が、可愛い弟には、変わりないのだ。
だから、司には、司の救世主と成る女性が必要とも、椿は思って居た。
其れが、つくしの様な気がして成らない椿だったのだ。
だが、其の事を静に幾ら話ししても、椿と同じ立場に居ない静では、椿の気持ちを汲み取れない事も仕方ないと思う椿だったのだ。
此の事を、椿は、静に伝える気は無かった。
だが、椿は思うのだった。
“司には、つくしちゃんが必要と、静ちゃんに思わせられる様に、私は、知ら占めて魅せ
るわ‼”と…。
そして、其の数週間後には、『party』の出席の日と成ったのだ。
其の『party』の出席の為…。
静とつくしは、メープルに向かって居たのだった。