俺の為だけの、俺の女…<つかつく> 1.
<司side>
あきらから、急に連絡が入って来た。
“よぅ、司…?
今日、飲みに行けるか?
総二郎にも、話ししてんだけど…よ。”
俺は、何故か、不審に思った。
俺は、何故、不審に思えたのかは、分からなかったのだが…。
俺の勘が、そう言って居た。
だが、誘って来たのが、他でもねぇ『あきら』なのだ。
“まあ、偶には良いか?”と、承諾した。
「ああ、良いぞ‼
いつもの所で良いのか?」
“ああ。”
で、その日は、F3で飲みに行く事に成った。
類は、現在、フランスに長期出張中で、日本には、居ねぇ。
という事で、俺は、いつもの堪り場で在るメープルのラウンジのVIPルームに向かった。
ラウンジのVIPルームに入って直ぐ、俺は、驚愕する事に成った。
何故、女が、此処に居んだ。
F3だけじゃねぇのか…よ?
俺は、在る意味、俺の勘が当たった事に納得していた。
で、其処(メープルのラウンジのVIPルーム)に居た女の一人は総二郎の女と、もう一人はあきらの女。
後の一人は、誰、何だ?
そう俺が、考えて居る時…。
俺が、見た事のねぇ女が、急に、叫び出した。
「優紀、桜子…?
此れは、如何言う意味…?
ふざけんじゃないわよ‼
女子会じゃ無かったの?
西門さんと美作さんが、此処(メープルのラウンジのVIPルーム)に居る時点で、何か
有るとは、思ってたけど…?
こういう事なら、私は、帰るわね‼
どうせ、ママにでも、頼まれたんでしょ?
じゃあ…ね‼」
「「………」」
そう言って、席を立ち、俺の横を横切って…。
この俺にも、見向きもせず、ドアに向かって歩き出し、振り返る事無く、ドアを開けて、帰って行った。
『あの女、凄ぇ奴だな?』
この言葉は、その時、俺が感じた、あいつの第一印象だった。
あいつの中で、俺が印象的だったのは、何かを見据えた様な真っ直ぐな黒い瞳(め)…。
其れは、それ以降、俺があいつを忘れる事が出来ねぇ状況に成る要因の一つだった。
で、総二郎が、俺を呼んだので…。
俺は、総二郎の横に座った。
で、あいつの事を訊いてる俺が居た。
「さっきのあの女、何処の女だよ?」
あきらの女が、俺の質問に答えて来た。
「牧野コーポレーションのお嬢様です。
パーティー嫌いな方なので、ご存知ないかも知れませんが…?」
俺は、そんな話しを聞いた事もねぇので、知らなかったが…。
「で、俺にあの女を会わせ様とした訳は…?
何なんだ?」
総二郎の女とあきらの女が、顔を見合わせていた。
で、あきらの女が、話しを切り出して来た。
「実は、先輩は、超が付く程の男性嫌い、何です。
多分、初恋もまだじゃ無いかと思うんです。
先輩の弟さんには、大学生の頃から彼女が、居るらしいんですけど…。
先輩には、全くと言っても良い程、そんな様子が無い。
だからって、女性が好きとかそういうんじゃ無いんです。
唯、男性とお付き合いする事自体が、面倒臭いと思って居る様な方、何です。
先輩の職業は、弁護士、何ですけど…。
考え方も、丸っ切り、お堅い方なので…。
おば様も、かなり、ご心配のご様子で、優紀さんと私が、おば様から頼まれたんです。
先輩に、“何方かご紹介して欲しい‼”と…。
その事を西門さんとあきらさんに相談した所、“適任が居る。”と、お話しが有ったの
で、今回、この場を設けさせて頂きました。」
俺は、総二郎とあきらを睨み付ける事は忘れて居なかった。
「で、其の適任っつーのが、俺って訳か?」
総二郎とあきらが、顔を見合わせて、気拙そうに、苦笑いを浮かべながら、俺を見て来た。
そして、あきらが、口を開いて来た。
「まあ、そういう事だ‼
お前も、いつまで経っても、彼女が居ねぇんだから、丁度良いじゃねぇかと思ったんだ
よ‼」
俺は、叫んでしまった。
「其れこそ、ふざけんじゃねぇよ‼
何なんだよ⁉
いい加減にしろよ‼」
俺は、席を立ち、この場に居る事も、嫌に成り、帰ろうとして居る所に、あきらが声を掛けて来た。
「本当は…よ。
“類に声を掛け様か?”とも思ってたんだけど…よ。
司の方が、良いんじゃねぇかと思ってよ。
司に連絡したんだよ。
まあ、多分、総二郎と俺に感謝する時が来んじゃねぇの?」
俺は、あきらのその言葉に狼狽えそうに成って居た。
その時は、俺にも、何故かは、分かって居なかったのだが…?