Again and again…<つかつく>・<総優> 6.
総二郎と優紀は、同時に驚愕していた。
何故なら、二人の間には、過去が有ったからだった。
優紀は、高校時代、茶道部に居た。
高校の茶道部の先輩の中に1歳上で、姉の様に慕って居た先輩が居た。
見た目の雰囲気もそうだが…。
性格も似た所が在った二人。
お互いの見た目の雰囲気と性格も似た所が在る事は、自他共に認めていた二人だった。
其の先輩の名は、日向更。
そうなのである。
総二郎の幼馴染でも在る。
優紀が、高校からの帰宅時に、更に誘われ、更の自宅に招かれて居た道中…。
偶然にも、西門流 家元夫人に声を掛けられた更だった。
更の母親が、西門流のお弟子さんで、通いでお稽古に通って居た事も有り、更は幼少期から、西門流に出入りしていた。
更は、唯一、西門家から認められ、本宅に出入りする事を許されて居た。
その為、総二郎の部屋にも、幼馴染という事も有り、出入りしていた。
其れも、或る程度の年頃に成った更は、西門家の出入りもする事は無く成り、西門流 家元夫人は、寂しさを滲ませていた。
だからだろうか?
家元夫人は、更に声を掛け、呼び止め、西門邸に誘い入れたのだった。
で、更は、渋る優紀をも一緒に連れ立って、西門邸に招き入れられて居たのだった。
其処に、帰宅して帰って来た総二郎だった。
総二郎は、更を見るなり、懐かしさが有ったのだが…。
見ず知らずの女性が、西門邸に居る事が許せず、総二郎は、理由を聞かず、在ろう事か?
優紀を玄関に引っ張り出し、罵倒していた。
「如何いうつもりで、此処に来たか、俺は、知らねぇ?
だが…な?
更のツレだか何だか知らねぇが、更を利用して、此の西門邸に入って来た事は許せねぇ
んだ‼
此処から、立ち去れ‼」
「………」
優紀は、何も、言い返す事無く、眼に涙を一杯溜めて、今にも、零れそうに成りながら、玄関で、靴を履いて居た。
其処に、更が、慌てて、玄関に来ていた。
「二郎…。
違うの。
おば様に誘われて…。
だから、私が、無理矢理、優紀ちゃんを連れて来たの。
だから、優紀ちゃんが、悪い訳じゃない‼
私が、此処(西門邸)に、来る事が嫌だったのなら、そう言えば、良いでしょ?
もう、良いよ。
優紀ちゃん…?
ごめんね‼
一緒に帰ろう‼」
そう言って、更と優紀は、その場を後にしていた。
総二郎は、その時の優紀の切なそうに、お辞儀をして帰って行った後ろ姿が、今も、眼に焼き付いて離れなかった。
総二郎の勘違いが生んだ気拙さでは有ったのだが…。
あれ以来、更とも、気拙く成って居た総二郎だった。
だが、その後、更は、或る決心をして居た。
総二郎は、更から誘われていた、“早朝5:00に、○○ビルに来て欲しい‼”との連絡にも、気拙さから行けず、『女遊び』を繰り返し、更を無視する形に成って居た。
更は、最後の賭けをして居たのだ。
『一期一会』…。
だが、総二郎は、更との約束の時間には、行かなかった。
更が誘ったビルに総二郎が来なかった事で、もう、二度と訪れる事のない時間に成ってしまった。
総二郎と更の二人だけの時間…の筈だったのに。
だから、更は、この恋に終止符を打つ事にした。
そして、その後、偶然、再会していた総二郎と優紀の二人。
何と無く、冴えない顔付きの総二郎を見て、何か有ると思い、優紀は、総二郎から、話しを訊き出して居た。
総二郎は、何故、優紀に言えたのか…?
分からなかったが…。
総二郎は、優紀に言えた事で、総二郎の気持ちは、スーッと、楽に成って来た気さえしていた。
総二郎は、優紀という女は、“不思議な女だ‼”と、認識していた。
総二郎にとって、優紀は、今まで、遊んで来た女にも、周りに居た女にも、居ないタイプの女という認識だった。
何故なら、幼馴染の更にさえも、感じなかった感情…。
優紀と居ると、リラックスしている自分自身に驚愕して居た総二郎だった。
総二郎にも、何故か?
分からなかった。
その時に、総二郎と優紀は、一線を越えてしまった。
総二郎は、何故、こう成ってしまったのか?
苦慮する処と成って居た。
だからだろうか?
総二郎は、帰り際に、優紀に思わず言ってしまっていた。
「俺は、良い男だけど…。
良い奴じゃねぇ。
今後は…?」
優紀も、総二郎の噂は、知っていたので…。
優紀は、総二郎が、喋り切るまでに、声を発していた。
「承知しています。」
とだけ、総二郎に告げていた。
だから、二度と会う事等無い筈の総二郎と優紀だと、二人は、認識していた。
優紀にとっては、初めてを捧げた相手だったのだが…。
また、総二郎は、其の事が、重く心に刻まれて居たのだった。
そして、其れから以降、総二郎の心とは裏腹に、総二郎の身体が、優紀を忘れる事等、出来ずに居たのだった。
其の二人が、また、再々会してしまったのだった。