twice ~2回目~…<つかつく> 3.
<司side>
俺は、目の前に居る女を見て、直ぐ、“あいつだ‼”と、確信した。
あいつも、俺を見て、はっとした顔付きに成った事は、俺には、直ぐ、分かった。
だが、あいつは、俺の横を、何食わぬ顔で素通りしやがった。
思わず、“つくし…?”と、呼び止めようとした。
ところが、つくしは、前から来た女に呼び止められていた。
俺は、物陰に隠れて、其の会話を聞いて居た。
「あっ、牧野先生…?
いらっしゃったんですね?
良かったです。」
「如何かされたんですか?」
「学長が、お探し何ですよ‼
何でも、『水耕栽培』の件で、話しを訊きたいという企業さんがお見えの様ですよ?
牧野先生も、大変ですよね?
有名に成られたから…。」
「………」
つくしは、返答出来ないのか?
答えずに居た様子だった。
其処に、また、其の女が喋り出した。
「あっ、いけない。
戻らなきゃ‼
其れでは、牧野先生…?
至急、学長室にお出で下さい。」
「承知しました。
一旦、部屋に戻って、荷物を置いてから、学長室に向かいます。
学長に申し送りお願いします。」
「了解しました。」
で、二人は、別れて別々の方向に向かって歩いて行った。
俺は、漸く、理解していた。
成程、ババアが言って居た『牧野准教授』とは、つくしの事だったのか?
てっきり、俺は、『准教授』と言うからには、中年男性だと勝手に思い込んでいた。
相当、つくしは、優秀の様だな‼
という事は、今から、つくしと学長室で逢うのは、俺って事だよな?
つくし…?
やっと、俺は、お前を見付け出せた。
“お前が、NYでの事は隠したいのなら…。
俺は、お前と、『初めて逢う男』として居て遣ろう‼
けどな、プライベートは、そうはいかねぇ事を認識しろよ‼”と、俺は、心の中で、つくしに悪態を突いて居た。
<つくしside>
私は、学長室の扉をノックして、開けた瞬間、また、扉を閉めたく成った。
何故、此処(学長室)に、司さんが居るの?
其処に、学長から、私に声が掛かった。
私は、学長室に入らない訳に行かなく成った。
そして、学長に促される様に、私は、学長の隣で、司さんの真向かいのソファに座る事に成った。
「牧野准教授…?
まだ、学内に居たんですね?
良かったですよ。」
「はい、学生と研究の総まとめをして居ましたので…。」
「そうでしたか?」
何故、学長は、そんなに、笑顔を絶やさず、喋って居るのだろう?
いつもは、余り、にこやかではないのに…。
でも、その答えは、学長の言葉で、直ぐに、理解出来た。
「牧野准教授…?
此方は、道明寺HD 副社長の道明寺司 氏です。
国会議員の○○先生よりご紹介が在り、本日は、本学まで、ご足労願いました。」
私は、驚愕した。
司さんが、そんな有名な企業の副社長だった何て…。
唯、私は、至って、冷静に学長に返答していた。
「そうでしたか?」
「早速ですが、『水耕栽培』の件で、お訊きしたい事がお有りの様でしてね。
是非、研究室をご覧に成りたいとの申し出、何ですが…。
牧野准教授…?
研究室のご案内をお願い出来ますか?」
「今から…ですか?」
「道明寺副社長は、大変、お忙しい方です。
今からでは、行けませんか?」
「賜わりました。
学長もご一緒して下さるんですよね?」
「いいえ、私は、ご一緒出来ません。
この後、学長会が有りますので…。」
「そうですか?」
私は、“遣られた‼”と、思って居た。
司さんは、態と、夕方の此の時間を狙って来たのだろうか?
でも、私だとは、認識して居なかった筈…。
だって、さっき、偶然、見掛けた時、司さんは、普通にしていた筈だから…。
という事は、さっき、偶然、会った後に、学長に打診したという事だろうか?
そう思いながら、案内する旨を、私は、司さんに告げていた。
あくまでも、一准教授として…。
「では、ご案内します。」
司さんが席を立ったと同時に、私も席を立って、扉を開け、司さんに先を促していた。
その時、司さんが、ニヤッとしている等と、私は、気付かずに居たのだった。
<司side>
つくしは、あくまでも、俺とは、初対面な振りを貫こうとして居る事は、十分過ぎる位ぇ、分かった。
だから、俺は、学長の前では、其れを貫いて遣った。
だが、研究室に二人っきりで入れば、其処は、もう、初対面じゃねぇ。
だから、俺は、つくしには、あの頃と同じ様に『つくし』呼びをして遣った。
「なぁ、つくし…?
やっと、見付けたわ‼」
「えっ??」
つくしは、驚愕して、俺の方を向いた。
眼鏡のレンズの向こう側の瞳(め)が、驚愕で震えていた。
だから、俺は、つくしの眼鏡を外して遣った。
あの頃のつくしに会いたかったからだ。
だが、つくしは、本当に見えねぇのか?
俺を手探りで、探してやがる。
「お願いします。
返して下さい。」
“俺は、また、あの頃の二人に戻りてぇのに…。
つくしは、違ぇのか?”と、心の中で、つくしに悪態を突いて居た。
だから、俺は、言って遣った。
敢えて、あの頃の二人を強調するかの様に…。
「俺と二人っきりで居る時に、俺の前で、敬語はしゃべるな‼
あの頃と同じ喋り方をしろよ‼」
「………」
つくしは、何も答え様とは、しなかった。
其れが、また、俺は、許せなかった。
だから、俺は、つくしを引き寄せて、抱き締めてしまった。
更に、驚愕して居たつくしだった。
「俺の前で、もう、眼鏡を掛けるな‼
俺は、お前自身が好きだ‼
否、あの頃と変わらず、今も、お前を愛してる‼」
俺のスーツのジャケットの内ポケットの中には、まだ、つくしの眼鏡が入って在った。