昔からある場所…<つかつく> 3.
<つくしside>
乙和カンパニーに就職した私は、お祖父様に約束してもらって居た事が在った。
「お祖父様…。
私が、乙和カンパニーに就職する際は、『牧野つくし』で、就職させて下さい。
会長の孫としてではなく、基礎から、自分自身を磨きたいんです。
了承、宜しくお願いします。」
お祖父様は、了承してくれた。
「分かった。
遣ってみるが良い。
しかし、儂は、何の手助けもせんぞ‼
其れでも、良いんじゃな?」
私は、ほくそ笑んで居たと思う。
お祖父様が、苦笑いを浮かべたのが分かったから…。
「返って、その方が有難いです。
宜しくお願いします。」
「じゃあ、そうしなさい。
じゃがな、住まいは、邸にしなさい。」
この件についても、異論を出した私だった。
「一人暮らしはダメですか?」
「………」
お祖父様は、仰天して居る様子だった。
だから、私は、話しを進めていた。
「私が、何処まで、遣れるか?
遣ってみたいんです。
宜しくお願いします。」
お祖父様は、私に何を言っても、“無理だ‼”と、判断したのだろう。
仕方なく、了承してくれた。
そして、私は、2年間、『牧野つくし』として、乙和家とは関係ない所で、生活していた。
唯、普通と違うのは…。
SPが、私の傍に就いて居る事と、私が住むアパートメントは、乙和家所有のセキュリティー万全なアパートメントだったと言う事だけ…だった。
だから、私は、一切、彼氏を作る事も出来ない環境下だったし…。
女性の同僚さえも、自宅に招待する事も儘ならない状態だった。
そして、乙和カンパニーに就職して3年目に成る頃に、私は、上層部に異動と成った。
勿論、誰もが、私の境遇を吃驚していた。
まあ、仕方ないだろうと、私は思って居た。
だって、元々の私は、一般家庭の…。
しかも、極貧家庭の娘だったのだから…。
だから、一般家庭の娘として生活する方が、本来の私は、性に合って居るのだと思う。
其れでも、1年間、お祖父様に鍛え上げられた私は、専務から副社長に繰り上げされて居た。
そして、日本支社の業績を伸ばす為…。
この度、日本に返り咲いたという訳だった。
私の日本支社への異動は、『乙和カンパニー』は、日本企業で在るという事を知ら占める為でも在った。
だが、私は、日本への帰国を、危惧していた。
皆…そう。
F4&T3にバレた時、何と言えば、良いのだろうか?
不義理処では無いこの状況に、何を言われるのか?
不安しか無かった私だった。
で、其の時の私は…。
そういう状況に成る事は、直ぐ其処まで、来ていた。
<司side>
俺は、西田が、持って来たつくしの情報に、驚愕するしかなかった。
で、俺は、西田に訊いて居た。
「西田…?
この情報は、如何いう意味だ?」
「其方に書いて有る事が、全てかと思われます。」
「だから、もっと、詳しく説明してくれ‼」
西田が言うには…。
*つくしは、実は、乙和カンパニーの孫娘だったという事。
*つくしの父親は、乙和カンパニーの会長の息子だったという事。
*つくしは、乙和カンパニーに就職している間は、『牧野つくし』で、通していたらしい
という事。
が、西田から、俺は、伝えられた。
まさか…だろ?
あの、極貧家庭の牧野家が、実は、乙和家の息子家族だったとは…?
今や、日本企業以外の世界的規模で言えば…。
乙和カンパニーは、道明寺HDを捉えようと勢い付いて居る企業だ。
今、うち(道明寺HD)が、乙和カンパニーと繋がれば、かなりの売り上げが見込める。
だが、其れだけじゃ無く、つくしを捕まえる事が、俺にとっては、何より、収穫が大きい。
成らば、この事実を、ババアに話しして、乙和カンパニーと提携に持ち込みたいと、ババアに打診する事にした俺だった。
で、ババアに、TELで、此の件を伝えていた。
既に、ババアは、西田から、連絡を受けていた様で、ババア自身も調査していたらしい。
で、つくしが、乙和カンパニーと関連が在る事が、事実だという事を突き止めたらしい。
そんな時の俺の連絡だったんだとよ‼
で、俺は、ババアから、言われていた。
「司…?
つくしさんを捕まえなさい。」
「良いのかよ?
あんなに毛嫌いしていた『つくし』だろ?」
「私(わたくし)は、一度も、つくしさんを毛嫌い等した事は有りません。
今後は、人聞きの悪い言い方は、為さらない様に…。」
俺は、此のババアの変わり身の早さに慄きそうに成って居た。
まあ、言う成れば…。
俺の気持ちとしては、“いい加減にしろよ‼”状態だった事は、言うまでもねぇ。
だが、ババアが、俺のする事に邪魔する気がねぇなら、本気で、つくしに向き合える事を良しとしていた俺だった。
そんな時、乙和カンパニーから招待状が届いたと、西田から、連絡が有った。
俺は、“当然、行くに決まってんだろ‼”と、心の中で、叫んでいた事は言うまでもねぇ。
だが、俺が、西田に言った言葉は…。
「承知した。」…だった。
西田が、ニヤッとしていた等、俺は、気付いて居なかった。