Again and again…<つかつく>・<総優> 16.
<総二郎side>
あれから、俺は、兄貴に、優紀ちゃんに逢わせて欲しいと、再三に渡り、頼んで居た。
司は、如何も、司の姉ちゃんが、兄貴に掛け合ったらしく、牧野とは、『2ヶ月のお試し期間』と、名を打って、取り敢えず、付き合いを始めたらしい。
だから、俺も、“そうしてぇ‼”と、兄貴に懇願してみた。
だが…兄貴は。
「総二郎を、瑞紀(義姉;兄貴の嫁さん)の郷に成る松岡家のお嬢さんで在る 優紀ちゃ
んと逢わす訳には、行かない。」
と、一点張りで、俺は、兄貴から相手にもしてもらえて無かった。
だから、本当はしたくねぇが…。
俺も、司に見習って、『押して押して攻撃』に出ようと、『病院関係者通用口』の前で、優紀ちゃんを待って居た。
いろんな奴が、俺を見て行くが…。
そんな事には、俺は、無視…。
俺は、目的が有って、此処に来てるんだから…。
で、或る日、やっと、俺は、優紀ちゃんと会う事が出来た。
俺は、優紀ちゃんの携帯(iPhone)のアドレスを知らねぇ為に、『病院関係者通用口』の前で、待つしかなかった。
だから、其れまでは、会えずに終わってばかりだった。
ましてや、兄貴にも、義姉にも会えずに居た。
もし、義姉にでも会って居たら、優紀ちゃんを、此処に連れて来てもらえてたんだけど…な。
そんな事を思いながら、俺は、優紀ちゃんを、毎日、待ち続けていた。
“俺が、女を待つ日が来るとは、過去の俺なら、思わねぇだろうな⁉”と、思って、下を向いて、苦笑していた。
そして、漸く、俺は、優紀ちゃんに逢えたんだ‼
俺は、此のチャンスを逃さねぇ様に、大事にする事を誓っていた。
<優紀side>
私は、『病院関係者通用口』を出た所で、西門さんが、目の前に立って居る事に気が付いた。
余りの驚愕に、言葉も、足も出なかった。
如何して、此処に、西門さんが居るのか?
私は、その事を先ずは、考えて居た。
“お義兄さんに会いに来たのかも知れない。”と、私は、思って居た。
だから、西門さんの前を素通りしようとした私の腕を、西門さんに捕まれてしまった。
驚愕で、言葉も出なかった。
だから、思わず、私は、西門さんの方に振り向いてしまった。
西門さんは、無言のままだったが…。
<総二郎side>
俺は、優紀ちゃんの腕を素早く掴んだ。
俺の前を素通りしようとした優紀ちゃんに、無性に腹が立って来た。
何で、俺が、目の前に居るのに…。
素通り出来んだ?
俺が、普通、目の前に居れば、女なら、飛び突くだろう…よ。
俺には、優紀ちゃんの考えて居る事が分からなかった。
だが、俺のそんな気持ちを余所に…。
優紀ちゃんの振り向いた時の顔付きは、目を見開き、驚愕した顔付きだった。
俺は、思わず、優紀ちゃんの顔をじーっと、見詰めたまま、何も、言えずに居た。
俺は、無言のまま、優紀ちゃんをその場から、連れ去る様に、俺の愛車の助手席に乗せた。
そして、俺は、無言のまま、愛車を走らせていた。
そして、向かった先は、やっぱりのメープルだった。
何故か?
無意識の行動だった。
メープルの地下駐車場に愛車を滑らせて入った時…。
俺は、チラッと、優紀ちゃんを見た。
優紀ちゃんは、苦笑い気味だった。
だから、駐車したと同時に、俺は、優紀ちゃんに声を掛けていた。
「優紀ちゃん…?」
「………」
俺は、優紀ちゃんに声を掛けた。
だが、優紀ちゃんは、チラッと、俺を見たが、声を発する訳じゃなく、また、俺から、目を逸らし、俯いてしまった。
「優紀ちゃんが、嫌なら、俺は、無理を言わねぇ。
けど…。
今日は、優紀ちゃんとゆっくり話しがしてぇんだ⁉
ダメか?」
「………」
優紀ちゃんは、俯いたまま、言葉を発する訳じゃねぇ。
だから、俺は、優紀ちゃんの方に身体を向けて覗き込んで、優紀ちゃんの顎を持ち上げた。
そして、俺は、優紀ちゃんの顔に、俺の顔を近付けて、言って遣った。
「優紀ちゃん…?
何も、言わねぇのは、肯定と見做して良いのか?」
優紀ちゃんは、目をパチクリしながら、俺に言って来た。
「お話しだけですか?」
否、俺の頭の中は、“願わくば…。”と、思って居た事は、事実だった。
だが、今の優紀ちゃんには、そんな邪な心は、横に置いて於かねぇと、多分、先に進まねぇ様な気がしたから…。
俺は、取り敢えず、優紀ちゃんに邪な心を伏せたまま、答えていた。
「ああ。
今日は、話しだけだ。」
「分かりました。
お供します。」
俺は、やっと、優紀ちゃんを取り込めそうな気がして居た。
そして、俺は、支配人に連絡して、部屋を取ってもらって居た。