おとり捜査…<つかつく> 3.
<楓side>
私(わたくし)は、“彼女に伝えるべき事を、きちんと伝えて於こう‼”と、思って居た。
私(わたくし)は、彼女から、不信感を抱かれない様に、話しを進める事にした。
「タマは、道明寺家に60年間、使用人として仕えてくれて居る使用人頭よ。」
「………」
彼女は、驚愕して居て、言葉も出せない様子だった。
「タマを助けてくれたそうね。」
彼女は、驚愕顔を顔面に張り付かせたまま、私(わたくし)の言葉に、答えてくれて居た。
「助けるという程では在りませんが…。
タマさんと知り合えて、私は、嬉しく思って居ます。
でも、そんな方の様には、思いませんでした。
タマさんは、気さくで、思い遣りが有って、情に溢れて居て、優しいお方です。」
私(わたくし)は、彼女の言葉を聞いて、“彼女には、見る目が在るのだろう‼”と、理解していた。
だから、私(わたくし)は、彼女に言えた言葉だったのかも知れない。
「そう貴女に仰ってもらえて、タマは幸せ者ね。」
「私も、タマさんと知り合えて幸せです。
私の父親と母親の両親が、既に、他界して居るので、私には、4人の祖父母が居ないん
です。
だから、“タマさんが私の祖母だったら…。”と、思った事は、何度も有ります。」
「そうだったのね。」
彼女は、私(わたくし)の顔を見乍ら、笑顔で、返事していた。
「はい。」
“本当に、タマが言う様に、素直なお嬢さんの様ね。”と、私(わたくし)は、思って居た。
また、同時に、私(わたくし)は、私(わたくし)にだけじゃ無く、警視総監に対しても、臆する事無く、自分自身の言葉をきちんと言える彼女に、タマが言って居た言葉を理解していた。
なので、私(わたくし)は、警視総監と、事前に打ち合わせをしていた通りに、話しを進めてもらう様に、目配せをした。
そして、警視総監は、彼女に話しを進めていた。
「牧野君…。
君に、お願いしたい仕事が有るんだ‼
明日の朝、私の部屋に来なさい‼」
彼女は、素っ頓狂な顔付きに成って、其れ以上は、瞼が開かないだろうと思う程…。
瞼を開かせていた。
そして、暫く、固まって居た様子だったが…。
我に返った様に、言葉を紡ぎ出した。
「あの~、お伺いしても、宜しかったでしょうか?」
「何だね?」
「警視総監のお部屋とは…。
『警視庁』の中という事ですよね?」
「当然だな‼
受付には、伝えて於くので、名前を言って、そのまま、私の部屋に来なさい‼」
「………」
彼女は、固まったまま、微動だにせずに居た。
だからだろう。
言葉も出せない様子の彼女が、其処には居たのだった。
だが、警視総監の声に反応して、ハッと成った様子だった。
「分かったのかい、牧野君…?」
「はい。
賜りました。」
こうして、彼女は、もう、私(わたくし)の包囲網から出る事は出来ない。
私(わたくし)は、彼女を気に入ってしまった。
司の為…。
私(わたくし)は、“彼女を、道明寺家から、離す事は出来ない‼”と、思って居た。
<つくしside>
私は、朝が、来ない事を祈って居た。
なのに…。
朝を迎えてしまった。
しかも、一睡も出来ないままの私だった。
私は、寝不足気味な状態のまま、警視庁に向かった。
そして、警視総監のお達しの通り、受付で名前を伝え、警視総監室に向かって居た。
其処(警視総監室)で、私は、面食らってしまった。
何故なら、今日も、また、道明寺HD 社長で在る 道明寺楓社長が、其処(警視総監室)に居たのだから。
で、ご挨拶と共に、警視総監から促される様に、ソファに着席した。
そして、着席する成り、私は、警視総監に或る仕事の打診を受けて居た。
「牧野君…。
此の資料は、他言無用でお願いするよ。」
「賜りました。」
私は、二つ返事で、了承していた。
そして、警視総監の話しは、続いた。
「此処に書いて在る様に、君に頼みたい仕事とは…?
君に、『おとり捜査官』に成ってもらう事、何だよ。」
「………」
私は、面食らってしまって、言葉に成らなかった。
だが、私は、心の中では、悪態を突く事は忘れて居なかった。
“はぁ~??”と…。
で、此処に来て、道明寺楓社長から、話しが為された。
「貴女は、道明寺HDの道明寺司をご存知…?」
「………」
私が、返答に困って居ると…。
警視総監が、補足の話しを続けられた。
「道明寺司 氏は、楓社長の御子息で、道明寺HD 副社長だよ‼
知っているだろう?」
私は、失礼だが、正直に答える事にした。
「申し訳御座いません。
存じ上げて居りません。」
「………」
警視総監からは、言葉も無く、呆れらてしまった。
私は、“此の場の雰囲気を如何したモノか?”と、迷ってしまって居た。
何故なら、本当に、私は、『道明寺司 氏』という方を知らないのだから…。
如何しようも無い。
其れなのに、警視総監からは、呆れられてしまった。
警視総監から、言われた言葉に、更に、私は、項垂れるしかなかった。
「牧野君は、雑誌というモノは、見ないのかい?
良く、雑誌に掲載されているだろ?
『英徳学園のF4』と…。
英徳学園だけで無く、世間でも有名らしいんだが…ね。
世間で騒がれている御曹司 4人組のうちの一人だよ。」
「………」
其れでも、私は、知らないのだから、首を傾げるしかなかった。
だから、言葉も出せずに居た私だった。
だが、道明寺楓社長は、そんな私を見たからなのか?
道明寺楓社長が、ニヤッと、笑って居る所を、私は、目に止めてしまって居た。