おとり捜査…<つかつく> 9.
警視総監から、司の話しを聞いたつくしは、警視総監に飛んでも無い事を言い出したのだった。
「警視総監、お願いがございます。
『おとり捜査官』としての任務を解いて頂けないでしょうか?」
警視総監は、驚愕して居た。
「其れは、如何いう意味かな?」
つくしは、躊躇する事無く、警視総監の目を見ながら、話しして居た。
「私は、警察官です。
やはり、『おとり捜査官』は、私には無謀な任務だった様です。
私は、やっぱり、現場が、好き何です。
私を、○○警察署 捜査1課に戻して下さい。」
「其れは、無理な相談だと言っても…かな?」
つくしは、警視総監を見据えたまま、はっきりと、意思表示を示していた。
「はい。
宜しくお願いします。
明日より、○○警察署勤務に、復帰します。
了承願います。」
意思の固い表情のつくしに根負けした警視総監は、つくしの気持ちに応える様に、返答していた。
「了承した。」
「有難う御座います。」
そして、つくしは、警察官として、復帰する事に成った。
また、此の件に関して、警視総監からは楓に伝えられ、楓より会長、そして、西田にも、つくしの意思の固さを伝えられていた。
そして、楓と警視総監の協議の結果、つくしの様子を視ようという事に成った。
そして、『此の判断が間違えで在った。』と、警視総監を始め、楓、会長、そして、西田にも、後悔する出来事が…。
此の後、起こるとは、誰も、予想だにして居なかった。
そして、つくしに逢えなく成ってしまった司は、何故、つくしが、自分自身の前に現れないのか?
苛立って居た。
司は、会長に詰め寄るも、唯、誤魔化そうとする会長だったのだ。
唯、会長の其の誤魔化し方に、更に、司は、苛立ちを募らせていた。
司への会長の誤魔化しの言葉とは…。
「牧野君は、儂の代わりに、今は、まだ、出張中だ‼」と…。
だから、会長と司の会議にも、打ち合わせにも…。
其の後のつくしは、会長に就く事は、一切、無かったのだ。
当然では有った。
つくしは、警察官に復帰して居たのだから…。
“此れが、恋なのだ‼”と、言う事を気付いてしまった司は、つくしに逢えないと言うだけで、胸が苦しくて、息も出来ない程…。
司自身、何もする気が起きなかったのだ。
なので、執務も怠り、秘書で在る 西田は、困り果てていた。
そして、西田は、等々、F3に助け舟を求めたので在った。
何故なら、其の後の司は、『恋煩い』を起こして、塞ぎ込んで、寝込んでしまって居たのだ。
先日の『party』会場で、司を見掛けて居たF3は…。
ポーカーフェイスを顔に張り付かせ、クールにいつもと変わらない威圧感の在る表情をして居る司では在るのだが、“司が、何か、いつもと違う⁉”と、F3は、見ていた。
其れは、幼馴染で親友で在る F3だからこそ…。
司のちょっとした顔の表情で分かる程度のモノだった。
だから、F3は、“司に、何か、良い事でも有ったのか?”と、思って居ただけに…。
西田からの連絡に、戸惑って居たのだった。
道明寺邸に到着したF3に、タマは、声を掛けた。
「司坊っちゃんは、如何も、『恋煩い』を起こし、其のお相手の女性に振られた様で、熱
を出し、寝込んでおります。
坊っちゃん方に、お願いがございます。
司坊っちゃんには、刺激に成る様な事は、一切、仰らないで下さいませ。」
だが、其処は、類…。
類は、“司には、荒治療が一番効く‼”と、思っていた。
だから、タマに言って居た類だった。
「でも、司には、そんな甘い態度で居ても、治らないでしょ?
現実を見極めさせる事も、俺等の仕事…何でしょ?
だから、俺等が、呼ばれたんじゃないの?」
だから、あきらは、類の言葉に、“今回の類は、何か、作戦でも有るのだろうか?”と、思っていた。
だが、類から、聞けた言葉に、あきらは、脱力しかなかった。
「まあ、行き当たりばったりの方が、司には、対応し易いんじゃない?
最悪は、あきらが何とかするでしょ?」
「はぁ~??
何で、俺…何だよ?」
「だって、あきらは、司の『猛獣使い』でしょ‼」
「………」
あきらには、返答が無かった。
否、あきらには、返答出来るだけの言葉が見付からなかったという方が、ピッタリ来るかも知れない状況だったのだ。
だからだろうか?
類とあきらの会話を聞いて居て、タマは、“此の坊っちゃん方に任せて大丈夫…なのだろうか?”と、些か、不安気味に成って居た。
だが、今の司を救える事も、また、F3だけの様な気もして居たタマだった。
で、タマの後に続き、司の自室に入ったF3は、司の姿に驚愕して居た。
つい先日の『party』会場で会った司と、全くと言って良い程…。
人が変わって居たのだった。
顔には、生気が失せ、色艶も無く、唯、蒼白い顔色をして、酸素マスクに、点滴で栄養を摂っている様子だった。
F3は、“司は、如何したと、言うのだろうか?”と、驚愕するしかなかった。
“唯の『恋煩い』に留まって居ないと言う事なのだろうか?”とも、思う、F3だった。
そして、目を覚ました司に、F3は、声を掛けていた。
「司…。
如何した?」
「司に何が遭った?」
「司…。
大丈夫…なの?」
F3は、それぞれ、其れ以上、声を掛ける事が出来なかった。
其れ程までに、司が変貌してしまって居た。
司は、寝て居る間…。
つくしと初めて会ったあの会食から、半年間のつくしと会って居た時の夢を見ていた。
そして、目覚めた事で、此れが、夢だったと落胆していた司だったのだ。
だから、言葉も無く、唯、何処とは無しに、天井をじーっと、見ているだけの司が其処には、居たのだった。