まだ、知らない世界…<つかつく> 11.
<つくしside>
其れからの道明寺は、体力を付けて、リハビリに励み始めて居た。
私は、道明寺がリハビリの間も、一緒に付き添って居た。
だが、流石に、“夜までは…。”と、思い、私が、ペントハウスに帰ろうとすると…。
道明寺が、寂しそうな顔付きをして、不貞腐れ始めるので、機嫌を直させるのに、いつも、道明寺と一緒に居る事に成る私だった。
だから、“今日こそは、一旦、ペントハウスに戻ろう‼”と、思い、身支度を整えている所に、道明寺が、不貞腐れ始めていた。
「つくし…。
もう、帰るのかよ…?」
「だって、流石に、毎日、夜までは…ね。」
更に、不機嫌に成る道明寺だった。
「だから、帰るのかよ?」
「仕方ないでしょ‼
着替えも、ペントハウスだし…。
流石に、此処(病院の特別室)は、私まで、泊まれる場所は無いでしょ⁉
控室は、在るには在るけど…。
其処に、毎日、私が、泊まるのは…?
そろそろ、ヤバいでしょ?
其れに、着替えも無く成って来てるし…。
洗濯もしたいし…。
其れに、そろそろ、夜に、此処ばかり居るのも、如何かと思うし…ね。」
そんな私の言葉を聞いて、道明寺は、不貞腐れて、私に背中を見せ乍ら…。
言って来た。
「そうか?
じゃあ、帰れ‼」
「………」
私は、答え様が無く、途方にくれて居た。
まだ、帰って居ない私の方を気にして居たのか?
暫くして、道明寺は、私の方に向き直しして、甘える様に言って来た。
しかも、油断していた私の腕を掴んで来て、急に、ベッドの方に引き寄せて…。
まるで、“帰さない…。”と、云わんが如く…。
引き寄せられて道明寺の身体の上に倒れ込んだ私を抱き締め乍ら、道明寺は、私に言って来た。
「寝る所なら、此処(司が寝ている特別室のベッド)が在るだろ?
俺の横で寝ろよ‼
此のベッドは、キングサイズだし…よ。」
「………」
私は、道明寺の考えて居る事の意図が分からずに居た。
だから、私は、言葉を発する事も出来ずに居た。
だが、私は、言葉を発する代わりに、心の中で、道明寺に悪態を突いて居た。
“いい加減にしてよ‼
病人と同じベッドで、寝れる訳無いでしょ⁉
ほんと、此の男は、何を考えて居るのだろうか?”と…。
だが、私の其の声は、しっかり、道明寺に聞かれていた。
如何も、私の心の声は、ダダ洩れの様子だったのだ。
如何も、私の心の声は、私の独り言として、私の口から出ているみたいだった。
だから、道明寺は、そんな私に、返答して来たみたいだった。
「俺は、お前の事だけを考えてるに決まってんだろ‼
何、言ってんだ⁉
今更だろ?」
「………」
私は、道明寺のストレートな返答に、言葉を発する事を忘れて、驚愕で、道明寺の顔を凝視してしまって居たみたいだった。
道明寺と一緒に居ると、如何しても、調子が狂ってしまう事を忘れていた私だった。
産まれた環境が違い過ぎて、道明寺が、元々、ストレートな男だった事を思い出していた。
そうなのだ。
道明寺の頭の中は、『YES』 or 『NO』…。
所謂、『有るか?』 or 『無いか?』しか無かったのだ。
道明寺の頭の中は、『曖昧』と言う言葉は、存在して居なかったという事を、私は、思い出していた。
だから、『優柔不断』の私は、道明寺の頭の中では、有り得ない事だったのだ。
だからかも知れない。
私は、答えてしまって居た。
道明寺の寂しそうな顔付きに負けて…。
「分かったわよ。
残れば良いんでしょ‼
但し、此処(病院の特別室)は、病室よ‼
何もシないでよ‼」
だが、其の時…私は?
未だ、道明寺に抱き締められた状態だったので、知らなかったのだ。
道明寺が、ニヤッとして居るとは…。
だから、道明寺は、私の耳元に言って来たのだろうか?
「俺が退院したら、良いんだよな?」
「………」
其れには、私は、“うん。”とも、“嫌だ‼”とも、言えずに居たのだった。
だって、其の時の道明寺の声が…。
『男』の声に聞こえて来たからだった。
言い訳じゃないけど…。
私は、大人に成った道明寺の声を聴いて…。
初めて、“道明寺は、『大人』に成って居たんだ‼”と、いう事を思い知ったのだった。
そうなので在った。
此の時の私は、初めて、“道明寺は、『大人の男性』だったんだ‼”と、言う事を思い知ったのだ。
私の知っている今までの道明寺は、『少年っぽさ』の残る『男性』という感じだった筈なのだ。
だが、其の時に、初めて私が観た大人に成って居た道明寺の初めての『大人の男』の顔…。
私は、道明寺に抱き締められて居たのだが…。
顔だけを上げて、そんな道明寺の顔付きを、唯、じーっと、観る事しか出来ずに居たのだった。