戸惑い…<つかつく> 6.
司は、つくしの様なタイプのお嬢様を初めて観たのだった。
セレブのお嬢様と言うのは、司の中では、立場が上の者に関しては媚びるが、下の立場の人間だと思えば、途端に、立場を変えるという認識だったのだ。
所謂、セレブのお嬢様というのは、司の中では、下の立場の人間だと思えば、横柄に成るという認識だったのだ。
また、セレブのお嬢様の司を観て来る目付きが、如何しても、解せない司だったのだ。
だが、司は、つくしを観て、或る意味、お嬢様というイメージが変わった様に感じて居たのだ。
司を観て来るつくしの大きな澄んだ瞳(め)…。
つくしの此の大きな澄んだ瞳(め)に、『目力』を感じて居た司だったのだ。
そして、司を観て来るつくしの真っ直ぐな眼差し…。
否、司を睨み付けて来る態度…。
司に媚びて来る事の無いつくしの態度には、司は、却って、好感を持てていたのだった。
だが、そうとは思って居ないつくしは、司に対して、嫌悪感しか無かったのだ。
だから、例え、英徳高校に通う事に成っても、つくしは、司に近寄らない様にする事にして居たのだった。
そして、つくしは、英徳高校に編入して通う事に成ったのだ。
そして、英徳高校に編入してからも、つくしの傍に居るのは、類だったのだ。
類は、静から頼まれて、つくしのエスコート役を買って出ていたのだった。
其の類とつくしの姿に、苛立ちを隠せないで居たのが、司だったのだ。
類には、分かって居たのだ。
つくしから相談を受けた時点で、司が、つくしに興味を抱いているで在ろう事を…。
だから、類は、心の中で、思って居たのだった。
“司は、つくしちゃんに惚れたかな?
あんな司の姿を観るのは、初めてかも…ね。”と…。
だからだったのだろう。
類は、態と、司に、つくしと仲が良い処を魅せ付けるのだった。
「つくしちゃん…。
俺が、英徳高校の事は、全て、教えて上げるね。
分からない事が有ったら、何でも、訊いてよ‼
相談にも乗るし…さ。」と…。
類のつくしに対する其の様子を観て居た司は、類に、初めて、メラメラと嫉妬の気持ちを魅せるのだった。
実は、司と類の間には、類にとっては、忘れられない思い出が在ったのだ。
F4が、幼稚舎に通って居る頃の事だった。
類が大切にしていた類の父親からのプレゼント…。
此のテディベアとは、シリアルナンバー付きのテディベアだったのだ。
此のテディベアを、司は、無理矢理、類から奪おうとして、此のテディベアを引き裂いたのだ。
此の時の事を、未だに、覚えて居た類は、“ちょっと、司に、仕返しをして遣ろう。”と、司を弄って居たのだった。
其の様子を観て居た総二郎とあきらは、『??』を頭に張り付かせていたのだ。
そして、あきらが、類に訊いて来たのだった。
「類…。
類が、エスコートして居る其のお嬢は、誰だ?」
だから、類は、間髪入れずに返答していた。
「静の従姉妹の『牧野つくし』さん。
牧野コーポレーションのお嬢様。
静が、従姉妹というより、『妹』の様に、可愛がってるらしいんだ。
俺は、つくしちゃんが日本に帰国して帰って来た時に…。
静から、紹介されて仲良く成ったんだよ。
ねぇ、つくしちゃん…。」
類は、態と、司の前で、つくしの顔を覗き込む様に、言って除けていたのだ。
此れには、司は、類に吠えそうに成って居た。
だが、司は、其れが出来なかったのだ。
何故なら、つくしの顔付きを観てしまったからだった。
つくしは、類に、顔を覗き込まれた事で、頭の天辺からデコルテまでを、真っ赤にさせて、照れていたのだ。
まるで、沸騰して居るやかんの様に…。
まるで、湯気が出ているかの様な姿だったのだ。
此れには、司も、何も言えずに、唯、つくしを見詰める事しか出来なかったのだ。
しかも、類は、そんなつくしの顔を、尚も、覗き込んで、つくしとの仲の良さを、F3にアピールして居たのだった。
司は、そんな類とつくしの様子を観て居て、悪態を突いて居たのだった。
「俺は、先に帰るわ。」
そして、司は、本当に、帰って行ったのだった。
そんな司と類…。
そして、つくしの様子を観て居た総二郎とあきらは、此の事態を、如何…捉えたら良いのか?
悩んでいたのだった。
総二郎とあきらは、お互いの顔を、唯、見合わせて、怪訝さを滲ませていた。
で、あきらは、何も言わずには居られない状況と成り、そんな類に言葉を発して居たのだった。
「類…?
お前等の間で、一体、何が有ったんだ?」
だから、類は、飄々と、総二郎とあきらに返答して居たのだった。
「さぁ~ね。
司は、何に、不貞腐れて、帰ったんだろうね?」
総二郎とあきらにして視れば…。
類が、何かを隠して居る様にしか、思えなかったのだ。
だから、総二郎とあきらの間には、司から訊き出す事で、気持ちは一致していたのだった。
なので、総二郎とあきらは、道明寺邸に寄る事にして居たのだった。
そして、総二郎とあきらは、道明寺邸の司の自室に居たのだった。
で、道明寺邸の司の自室に入った総二郎とあきらは、驚愕していたのだ。
何故なら、司の自室の中だけが、“嵐でも吹いたのか?”と、訊きたく成る程の凄まじい荒れ様だったのだ。
そんな道明寺邸の司の自室に居た総二郎とあきらは、司に訊き出していたのだ。
先ずは、あきらから口火を切って居たのだった。
「司…。
お前等に、何が有ったんだ?」
司は、尚も、不貞腐れた顔を張り付かせたまま、総二郎とあきらに向かって、言って除けて居たのだった。
「類は、如何してんだ?」
「「………」」
総二郎とあきらは、司が、訊いて来る意図が分からず、驚愕で、言葉に出来ずに居たのだった。
だが、我に返った総二郎が、司の問いに、答えていたのだった。
「類…か?
多分、今も、あの牧野コーポレーションのお嬢と、一緒に居るだろ。
結構、仲良さ気だったし…な。」
其の総二郎の言葉に、ソファに腰掛けていた司は、無言で、司の目の前に有ったテーブルを蹴り上げていた。
其の司の様子に…。
何時にも増して荒れている司に対して、総二郎とあきらは…対処の仕様も無く、途方に暮れていたのだった。
だが、あきらが、ポツンっと言った言葉が、総二郎とあきらには、全てを物語って居ると思って居たのだった。
「司と類で、一人の女を奪い合うって、F4の沽券に関わるぞ‼」と…。
だが、司には、其のあきらの言った言葉は、聞こえて居ない様子だったのだ。
其れ程までに、司の心の中は、黒い渦が、渦巻いて居たのだった。