有り得ないっつーの‼…<つかつく> 5.
<イギリスでの所長とつくしの会話は、英語での話しと、認識してご覧下さいませ。
日本語表記を致しておりますが、了承願います。>
<つくしside>
あの日、私が、雑誌の記者の対談に応じてから、何故か、所長より、“有り得ないっつーの‼”と、言わずにはいられない様な話しが、また、私に為されて居た。
「日本のTV局から、オファーが来たの。」
と、言う事だった。
所長には、「断わって下さいね‼」って、私は、お願いしたにも拘わらず…。
受けてしまう所長に激怒しながら、「仕方ないので、1社だけ‼」と、また、受けてしまう私って…。
“有り得ないっつーの‼”と、叫んでしまいそうだった。
日本から、TV局のアナウンサーとカメラマンの数名がイギリスまで来ていた。
一応、“受ける‼”と、言った以上、ちゃんとしようと、対応をしていた私…だった。
TV局sideが用意してくれたヘアメイクさんとスタイリストさんの方に綺麗にしてもらって、鏡を見た私は、驚愕した。
“此れが、私…?”と…。
余りにも、私本人の素顔と違い過ぎる変貌振りに、私自身の事なのだが、何も言えずに居た。
まるで、鏡の中の私を見た私自身は、別人の女性を見ている様だった。
で、事務所の一室が、“此処って、スタジオ?”ってくらい部屋の様相が変わっていた。
裁判でも、ここ最近は、緊張する事も余り無く成って来ていたというのに…。
心臓の音がマイクを通して、聞こえるんじゃないかって位、バクバク、煩い‼
此の緊張感は、久々の事なので、自分自身に戸惑って居た私だった。
何故なら、此の『スタジオ感』満載の部屋を見て…。
“緊張するな‼”と、言われる事自体が、“有り得ないっつーの‼”と、思える状況だったのだ。
そんな中、撮影が始まって、何時の間にか終了していた。
私は、ちゃんと、話せていたのだろうか?
不安しか残って居なかった。
こんな状況だったにも関わらず、意外な事に、その後、日本のTV局から、打診が有ったらしい。
「国際弁護士を題材にしたドラマを制作する予定なので、監修として手伝ってもらえな
いか?」と…。
迷っていたが、所長が後押ししてくれた。
「何事も経験だから、受けてみたら…?」と…。
一応、受けて視る事にした私…。
だが、この事が切っ掛けで、日本で大変な事件が起こるとは、私でも予想もして居なかったのだが…。
<司side>
牧野が、雑誌に載ってから、姉貴が俺の執務室に現れた。
「司、つくしちゃんが雑誌に載ってるのよ‼」
「ああ、知ってる。」
「見たの?」
あきらが持って来てくれた日本で発売されていたという雑誌を、俺は、姉ちゃんに、手渡した。
勿論、牧野の記事が、掲載されているページを開けたままで…。
俺は、其の雑誌を何度も見返していた。
だから、牧野のページには、折り目が付いて居たので、直ぐ開けられる状態だった。
「ああ、日本で発売された雑誌をあきらが持って来てくれたんだ。
ほれ、此れ‼」
姉ちゃんは、落胆気味に俺に話ししていた。
「そうか、そうだったんだ。
つくしちゃんが、遠くに行ってしまったみたいで、何だか悲しいんだけど…(泣)。
司、つくしちゃんを早く捕まえなさいよ‼」
俺には、分かり切っていた。
俺をこんな風に変えたのは、牧野だ‼
牧野が認める男に俺が成らねぇと、牧野は俺を認める事はねぇのだろう事は…。
だから、俺は、姉ちゃんに、答えていた。
「今の俺じゃあ、まだ、牧野は認めてくれねぇだろ‼
もう少し何だ。
形に成るのは…。」
「そんな事を言ってたら、つくしちゃんを他の誰かに持って行かれるわよ。」
“姉ちゃんに言われなくても、俺は焦ってんだ‼”と、俺は、姉ちゃんに叫びそうに成って居た。
そんな時…。
姉ちゃんから、訊かれていた。
「で、今後は如何するつもり?」
「取り敢えず、今のプロジェクトを遣り終えてから、親父には、イギリス支社に転勤願い
を出すつもりだ。」
姉ちゃんは、ホッとして居る様で、俺にそんな顔を見せていた。
“姉ちゃんは、ほんと、牧野の事が好きだよな‼”と、俺は、思っていた。
「そう、司は、もう、考えて居たのね。
絶対、つくしちゃんを連れ戻して来なさいよ‼」
「ああ。
分~ってるよ、姉ちゃん‼」
俺は、決意を新たにした。
そして、俺から、親父に転勤願いの話しを切り出した。
だが、親父は、もう、話しを進めてくれて居た。
「親父、今のプロジェクトを遣り終えたら、俺をイギリス支社に転勤させて欲しい。」
「ああ、そのつもりで、話しは進めてる。」
俺は、興奮状態に在った。
だから、親父に叫んでしまった。
「親父っ‼」
「お前には、辛い立場に追い遣り、申し訳なかった。
楓も、道明寺HDの将来を思っての事だった筈だ‼
だが、楓は遣り過ぎたみたいだがな…。
お前にとっては、有り得ない出来事だったな。
楓が、お前の将来を操作しようとした事は、『罪深い』という事だ。
もう、そんな時代じゃないという事を、楓も認識しなければいけなかったみたいだ
な。」
「親父っ‼」
俺は、親父が、俺を認めてくれた事が、嬉しかった。
其れに、まさか、親父が誤ってくれるとは思っても視なかった。
だから、俺は、牧野を取り戻す為…。
必死で、プロジェクトを遂行し、遣り遂げて成功させた。
で、其の後の俺は、イギリス支社に転勤が決まり、“此れで、やっと、牧野を迎えに行ける‼”と、思っていた矢先…。
蓋を開けて視れば、既に、牧野は、一時、日本に帰国していた。
“俺とつくしは、何時まで経っても、擦れ違いばかりで交わる事はねぇのか?”と、俺は、焦りと落胆するしかなかった。