助け出したい…<つかつく> 7.
<つくしの後輩ドクターside>
現在の道明寺さんには、先輩の記憶が無いと聞いて居た。
過去の事件のせいで、先輩の記憶を喪失してしまっていると…。
“そんな事が実際、起こるのか?”と、俺は、半信半疑だった。
俺も、ドクターの一人として…。
医学の世界では、有り得ない事が起こる事も分かって居るつもりだった。
だからこそ…。
“まあ、有り得たからこそ、道明寺さんの現在が在るのだろう。”と、俺は、思って居た。
道明寺さんは、意識を覚醒してからは、順調に、回復していた。
家族にも、その事は、説明した。
勿論、俺が、一応、道明寺さんの主治医なので、俺から説明した。
だが、道明寺さんのお姉さんは、俺からの説明に…。
その場に、牧野先輩が居ない事に怪訝な態度をされてしまった。
だが、主治医では無い筈の牧野先輩は、道明寺さんが眠っているで在ろう時間帯(所謂、夜中)に、道明寺さんの病室に行き、様子を窺っているみたいだった。
その事を知ったのは、俺が、道明寺さんの回診をして居る時だった。
先輩の忘れ物で有ろう代物が、サイドテーブルに置いて在った。
多分、道明寺さんは気付いて居ないだろうと思う。
俺は、道明寺さんに訊いてみた。
「道明寺さん…?
道明寺さんには、一部の記憶が無いそうですね?」
「ああ、そうらしいな。
それが如何したよ?」
「いえ、その記憶が大切な記憶だったら、道明寺さんは、如何するのだろうと思っただけ
です。」
「大切な記憶…?」
「ええ…。
例えば、恋人の記憶だったり…。」
「恋人…?
俺に…か?
そう言う人間が、俺の傍に居た覚えはねぇよ‼」
「じゃあ、良いですよね?」
「何が…だ?」
「いえ、結構です。」
<司side>
俺は、あの時…。
あいつの後輩ドクターとやらに、何故、反論しねぇで終わらせたのか?
後悔が募っていた。
実は、記憶を取り戻す少し前から…。
所謂、あいつの後輩ドクターとやらと、話しをする少し前から、少しずつ、あいつの事が気に成り始めて居た。
何故か、記憶がねぇにも関わらず、直感で、ピンと来ていた。
あの時、初めて、女が欲しいと思った。
あの女だけが…。
俺を、俺自身を変えてくれる女だと、直感でそう思っていた。
俺は、あの、俺の主治医とか言う、あいつの後輩ドクターと、話しした後、記憶の事が気に成り出して居た。
そして、そう思って居たその日から…。
また、あの日…見た、後ろ姿の少女の夢を頻繁に見る様に成っていた。
ましてや、日にちが経つに連れ、どんどん、少女は大きく見える様に成って来た。
ここ最近では、後ろ姿だけではなく、横顔までも見える様に成って来ていた。
それが、今日は、目の前の少女が、真正面を向いた形で夢の中に現れたのだ。
正しく(まさしく)、俺の手術を執刀したとか言う女ドクターだった。
勿論、実物より、若ぇのか、制服を着ていた。
俺は、ナースコールから、あの女ドクターを俺の部屋に来る様に伝えた。
俺がナースコールしてから、30分後に、俺の部屋に入って来た。
俺は、あの女ドクターの来る事が遅ぇだけで、イライラしていた。
あの時と、同じ気持ちが其処に在る事を、俺は、思い出していた。
そう、あの時とは…。
高校の頃に、暴漢に刺されて入院していた時…。
あいつが来ると、何故か?
イライラする俺が其処には居たのだった。
そして、此の後、直ぐ、俺は、あいつの記憶を取り戻したのだった。
<つくしside>
私は、主治医では無いと言って居るのにも関わらず、道明寺に呼び出しされた。
厚かましいにも程がある。
私は、“遊んで無いっつーの‼”と、叫びたい心境だった。
そして、道明寺の部屋に行って、私は、驚愕する事を訊かれてしまった。
私にとっては、想定外だった。
「お前…?
俺が、高校のガキの頃…。
俺が刺された時、病室に見舞いに来てたあの女だよな?」
「えっ??」
「『類の女』じゃ無かったのかよ?」
「だから、あの時も言ったわよね?
“私は、『花沢類の女』じゃない‼”って…。」
「ああ、確かに聞いた。
じゃあ、『誰の女』だったんだよ?」
「そんな事、私から訊き出して、如何するのよ?」
「俺の夢にお前が毎日、出て来るんだよ‼
鬱陶しくてしょうがねぇんだよ‼
如何にかしろ‼」
何ちゅう言い草⁉
此の忙しい時に、私は、そんな事で呼び出されたと言うの?
其れこそ、鬱陶しいっつーの‼
「はぁ~??
鬱陶しくて、悪かったわよね⁉
そんな事で、此れから、私を呼び出さないで…。」
そして、私は、道明寺の部屋から、出て来て遣った。