助け出したい…<つかつく> 9.
<椿side>
私は、司の表情から、司の記憶は戻って居る事を悟った。
「ねぇ、司、記憶が戻ってるんじゃないの?」
「だったら、如何、何だよ?」
「お母様はね、司とつくしちゃんの事は、“もう、何も言わない。”って、仰っているの。
だからね、司、堂々と、つくしちゃんに向かえるわよ‼」
「ババアに、『認められる or 認めてもらえねぇ』って話しは、俺にとっては、二の次
何だよ⁉
要は、牧野の気持ちを取り戻す方が先…。
何だっつーの‼」
私は、“まあ、そうよね…。”と、司の言葉が正論過ぎて、そう思うしかなかった。
「だからよ、姉ちゃんは、牧野に、何も言うなよ‼
俺が、牧野をその気にさせて魅せるからよ‼」
「分かったわよ…。」
私は、司の懇願して来る態度に何も反論出来ずに居た。
<司side>
あれからの俺は、先ずは、牧野を主治医にする事に決めた。
その為、院長を俺の病室に呼び出した。
「何故、俺の手術を執刀した執刀医が主治医じゃねぇんだ?」
「それは、西田様より、道明寺様は…。
“女性の担当は、好まない。”と、お伺い致しましたので、牧野と相談致しまして…。
主治医を、此方で決めさせて頂きました。」
西田の野郎、今度、こっち(病院)に来た時は、締め上げて遣ろうか?
「じゃあ、俺の執刀医を主治医にしてくれ‼」
「………、ですが?」
「俺が良いって、言ってんだ‼
何か遭ってからじゃ、遅ぇんじゃねぇの?」
「賜わりました。
至急、手配致します。」
こうして、牧野は俺の主治医に成った。
牧野は、かなり怒(いか)ってるだろうけど…よ。
そんな事は、俺は知っちゃ居ねぇ‼
俺の下に取り戻す為だったら、どんな事でも遣って遣るよ‼
<西田side>
私は、あれから、骨折も回復して、リハビリも順調に進み、すっかり治って、退院した。
此方に、通いながら、一応、無理をしない事を条件に、仕事に復帰していた。
勿論、生活には、支障ない。
そんな時、司様の記憶が戻って居る事を確信した。
「司様、記憶が戻っていらっしゃる様ですね?」
何故か?
司様の様子が変に思えていた私だった。
司様は、牧野先生の記憶が戻られて居るにも関わらず…。
如何も、不機嫌の様に、私には、見えた。
「ああ、戻った。
それと、俺の主治医は牧野にする‼」
やはり、そう為さいましたか?
記憶が戻られたのです。
想定内でございます。
「牧野先生の反論は、御座いませんか?」
更に、不機嫌顔で、私を睨み付け乍ら仰る今の司様は、私にとっては、想定内の事だった。
「はぁ~??
其れは、如何いう意味だよ?
あいつは、俺の主治医が出来んだよ⁉
喜んでるに決まってんだろ‼」
「………」
言葉に出さないまでも…。
私は、“左様でございますか?”と、心の中で言って於いた。
其れよりも、司様から、お怒りのお言葉が聞こえて来た。
「あのなぁ~、余計な事するなよな‼」
「何の事でしょうか?」
「牧野を主治医にしねぇ様に、院長に言ってたらしいじゃねぇか?」
“ああ、成程で御座いますか?”と、私は、心の中で、納得していた。
だからこそ、司様に、ご納得頂ける様に、分かり易く、説明して於いた。
「入院したての頃は、まだ、司様の記憶は、勿論、戻っていらっしゃいませんでした。
もし、女性ドクター・ナースが担当に成れば、司様が如何成られるか?
分かっての事で、院長にお伝え致したまでで御座いましたが…⁉
何か、ご不満でも御座いますか?」
「否、何もねぇ‼」
「左様で御座いますか?
宜しゅう御座いました。
他に何か御座いますか?」
「否、何もねぇ‼」
「左様で御座いますか?」
「………」
司様が、何も言い返せないだろう事を承知の上で、私は、司様にお伝えしていた。
何故なら、私は、司様の記憶がお有りな時と、無い時の状態を、良~く理解して居るからこその対応だった事は、言うまでも無かった。
誰よりも、司様を理解して居るが故の私の行動だと捉えてもらえると有難い。
私は、司様が、幼少期の頃から…。
司様の母親で在られる楓様の秘書をして居たのです。
タマさんでは無いが…。
私は、司様を見続けて参りました。
だからこそ…。
私は、司様のお考えを理解して居ると、自負しております。
此の私を、侮って頂いては、困ります。
私は、そう思いながら…。
こうして、司様の病室から退出した。