一方通行の恋…<つかつく> 11.
<司side>
俺は、思い切って、あいつに声を掛けた。
例の非常階段で…。
「よぉ、大丈夫か?」
「へっ?」
声が裏返ってんぞ‼
「否、静を迎えに行った時の涙の訳…⁉」
「えっ??
私の何を知ってるの?」
「あぁ、まあ…な。
類が、好きなんだろ?」
「………」
こいつは、何も答えなかった。
否、応えられなかったんだろ?
俺は、こいつの表情を見て居て、もう、気持ちを抑えられねぇ状態に成って居た。
「なぁ、俺じゃあ、ダメか?」
「………。
其れって、如何いう意味?」
俺は、こいつの言って来る意図は分からねぇが…。
意を決して、言葉を紡いでいた。
「俺は、お前が好きだ‼
俺じゃあ、ダメか?
俺は、今後、お前が嫌がる事はしねぇと誓う。
お前が、俺の傍にさえ居てくれたら、俺は、それで満足だ。
お前の気持ちは、それからでも、良しとする。
俺を見てくれねぇか?」
「………」
こいつは、何も答え様とはしねぇが…。
こいつからぽつりと、小さな声で言われた言葉に、俺は、無性に、抱き締めたくなった。
「何なの…?
此の俺様な発言は…?
何で、今、そんなに、私に優しくするのよ~⁉」
で、居た堪れなく成って、俺は、思わず、抱き締めてしまった。
もがいて、離れ様とするのかと思いきや…。
俺から、離れ様とする訳じゃなく、じーっとして、俺に抱き締められたままのこいつが、俺の腕の中に居た。
マジで、堪んねぇ‼
何で、俺の身体にこいつは、添うんだ⁉
俺仕様のこいつに、俺は、こいつを離して遣る事が出来ずに居た。
“お願いだから…‼
このまま、暫く、俺に抱き締められててくれ‼”
俺は、心の中で、こいつに、そう、叫んでいた。
<つくしside>
私は、何故、こいつの腕の中に居るんだろう?
その意味が、分からなかった。
でも、今の私は、誰かに寄り掛かりたい気分だったのだ。
静お姉様には、決して言えない、私だけの秘密…。
初めて、静お姉様に嘘を付き、秘密を作ってしまった。
でも、言える訳が無かった。
そーっと、私の心の中に、封印するつもりで居た私だけの私の為の秘め事…。
其れを、何故、こいつが知ってるの?
今までに、誰にも、言った事が無かったのに…⁉
私の苦しみを、こいつに抱き締められて居た事で、無くなるとは思えないけど…。
何故だか、スーッと、気が楽に成って行くのが分かった。
「有り難う‼
もう、大丈夫だから…。
この事は、静お姉様にも類にも、言わないで欲しいんだけど…?
良いかな?」
<司side>
言うかよ‼
自ら、言えば、墓穴を掘るだけだろ…。
「ああ、分~ってる。」
「でも、何故、分かったの?」
「そんなの、当り前ぇだろ?
好きな女をじーっと、観察してたら、普通、分かるだろ?
俺は、お前が好きなんだ‼
俺は、お前しか見えてねぇよ‼」
「………」
何も、言えねぇのか?
答え様とはしねぇ、こいつの額に、『デコピン』をして遣った俺が其処には居た。
“お前だけが苦しんじゃねぇよ‼
お前を見ている俺だって、苦しいんだよ‼
それ位ぇ、分かれよ‼
俺は、お前の事が好きなんだよ‼
好きで好きで仕方ねぇ女が、俺の幼馴染で親友を好きだと知った俺の気持ちを分かって
くれよ‼”
俺は、心の中で、こいつに悪態を付く事しか出来ずに居た。
こいつを傍で見ている俺は、息が出来ねぇ程、苦しんでいた。