泣かずに居られるのなら…<つかつく> 8.
航は、司が言った『ママ』と言う言葉に反応していた。
「ねぇ、パパ…?
ぼくにも、ママがいるの?」
司は、絶対に、つくしを見付け出すつもりで居たので、間髪入れずに、つくしの存在を航に伝えていた。
多少、デフォルメ気味では有ったのだが…。
其処は、F3も、タマも、気付いては居たのだが…。
敢えて、反論しなかった。
「ああ。
航にも、ママは居るぞ‼
でもな、パパも、記憶を失くすという病気で、航とは、一緒に居られなかったが…。
ママも、今は、まだ、病気で入院してるからな。
ママの病気が治ったら、パパと一緒に、迎えに行こうな‼」
航は、顔だけ、司の方を向けて、ニコっと笑って、言って来た。
「うん、パパ。
やくそくだから…ね。」
「ああ。」
司も、航に、ニコっと、微笑んでいた。
タマは堪らず、涙を流して居た。
そして、やっと、本格的にF3の紹介に入った。
「航、パパとママの親友を紹介するな‼」
「うん、いいよ‼」
航は、F3の方をしっかり見ていた。
「こっちが、花沢類。
パパが病気の間…。
ママが、病気の間も、パパの代わりに、ママを助けてくれて居たんだ‼」
航は、司の膝から降り、類の方に向かって歩き出して、類の前で、頭を下げて、類に礼を言って居た。
「るいくん。
ママをたすけてくれて、ありがとうございました。」
「………」
類は、航に、何て、答えたら良いのか?
分からずに居た。
類には、微かでは有ったが…。
裏の心が在って、つくしを面倒看て居たと言う事実は否めないのだから…。
だが、こんな素直な航に、其処を追及しても仕方ない。
敢えて、類は、微笑んで航に返事していた。
類は、航の頭を撫ぜ撫ぜしながら…。
「良いよ。
航のママだから…ね。」
航は、ニコっと、類に、微笑返していた。
続いて、司は、総二郎を紹介していた。
「こっちが、西門総二郎だ‼」
航は、総二郎の前に行き、頭を下げて、挨拶をした。
「そうじろうくん、よろしくおねがいします。」
「宜しくな‼」
司は、F2の時と同様に、あきらも紹介していた。
「航、こっちが、美作あきらだ‼」
航は、総二郎の時と同様に、あきらにも、あきらの前に行き、頭を下げて、挨拶をした。
「あきらくん、よろしくおねがいします。」
「宜しくな‼」
総二郎とあきらも、航の頭を撫ぜ撫ぜしながら、挨拶していた。
F3は、きちんと、教育されて素直な航に驚愕していた。
“容姿は兎も角として、性格は、『牧野譲り』なのだろう‼”と、F3は、分析していた。
こうして、F3と航は、交流を持つ事に成った。
後は、“つくし(牧野)を見付け出すだけだ‼”と、誰もが、思って居た。
一方、つくしは…。
あれから、イギリスに渡英して、弁護士事務所でバイトをしながら、ロースクールの1年コースで、国際弁護士の資格を取得する為、勉学に励んでいた。
勿論、奨学制度を利用していたので、勉学を疎かにする事は出来ずに居た。
その為、寝る間を惜しんで、頑張った甲斐があり、1年後には、司法試験に合格し、国際弁護士の取得に成功していた。
しかし、無理が祟り、高熱を出し倒れてしまった。
国際弁護士の資格が取れた事で、ほっとしたのが、原因でも有ったのだろう。
つくしは、行き成り、高熱が出て、立って居られない程、身体は、寒気で震え出していた。
つくしは、運ばれた病院で、取り敢えず、入院する事に成って居た。
ドクターも、余りの衰弱振りに、命が、持つだろうかと、思案する程だった。
暫くは、絶対安静を言い渡されていたつくしだった。
つくし自身、立っても、ふら付くだけなので…。
動く事は、出来そうに無かったのだが…。
一方の航は、英徳学園 初等部 2年生に進級していた。
そんな頃、司の元に、つくしらしい人物が、イギリスに居るという情報が入って来た。
唯、其の情報は、病院に入院して居るという情報の為…。
それが、本当に、つくしかは、定かではないという話しだった。
だが、司は、“どんな小さな情報でも、俺に知らせろ‼”と、伝えていた。
だから、伝えられた情報では有った。
下手すれば、有耶無耶にされても可笑しくない情報では有ったのだ。
なので、司は、西田にイギリスの出張を入れる様に手配を掛けた。
そして、つくしが入院しているかも知れないという病院名まで、“調べろ‼”と、西田に伝えていた司だった。
そして、嘘の情報かも知れないので…。
航をがっかりさせない為にも、先ずは、司だけで確認する事にしていた。
航には、出張とだけ、伝えて…。
そして、司は、気だけ焦って居る自分自身に戸惑っていた。
司は、気をしっかり持つ様に、自分自身を諫めていた。