もう、逃がさねぇ…<総優> 後編
<総二郎side>
優紀を俺から離したく無くて…。
お袋には、しっかり言って於いた。
「優紀には、何れ、西門流 次期家元夫人として自覚させる。
だが、今、優紀が俺から離れるのだけは避けたい。
だから、お袋が、目廻ししたい処だろうけど、今は、まだ、待っててくれ‼」
お袋は、怪訝な顔をして居た。
「其れは、いつまで、待って居れば、宜しいのかしら?
総二郎が、馬鹿な遊びをしなく成ったのも、優紀さんのお陰…。
西門家としては、優紀さんを取り込んで於きたいんだけど…?」
「分かってる。
だから、其れは、もう少し待っててくれ‼」
伝えたい事だけ伝えられたので、お袋の傍から離れ様として居た時に、お袋から、飛んでもねぇ言葉が出て来た。
「総二郎、貴方の初恋って、更ちゃんだったんじゃなくて…?
でもね、今だから言うけど…。
更ちゃんじゃなくて、良かったかも…ね。」
俺は、憮然とした態度で話しをして居た。
俺は、“お袋は、知ってたのかよ⁉”って、ムスッとして居た。
「其れは、如何いう意味だよ?」
「更ちゃんじゃあ、此の(西門)邸は、温かく成らなかったでしょ?
でも、優紀さんは、違うわ‼
此の(西門)邸を温かくしてくれた。
笑いの在る(西門)邸に…ね。
それに、学生だった頃の総二郎が、私(わたくし)を呼ぶ時は、『家元夫人』と呼んで
居たのが…。
優紀さんが、総二郎の傍に居る様に成ってから、『お袋』呼びに成ったでしょ?」
俺は、お袋に自然にそう呼んで居たんだろうな?
今、言われて、初めて気付いた。
「其れが、嬉しかったのよ。
何より、総二郎、貴方が精神的に落ち着いてくれた事もね。」
成程な…‼
そして、お袋から、続けて言われた。
「優紀さんは、西門家としても、もう、逃がさないから、そのおつもりで…。」
俺は、宣言して遣った。
「そんな事は、俺が一番、良~く分かってんだよ。
俺が、“優紀を、俺からもう、逃がさねぇ‼”んだよ‼
あいつが、俺の傍に居ないとな。
俺が、俺じゃなく成るんだよ‼
だから、お袋も、俺に協力しろよ‼」
俺は、お袋のレアな姿を見てしまった。
お袋は、クスクス笑ってやがる。
嘗て、こんなお袋を俺は、見た事が有っただろうか?
「十分過ぎる位、分かってますよ。
だから、総二郎もしっかり、優紀さんを捕まえて為さい。
宜しくて…(笑)?」
俺も、笑って返事をお袋に返して遣った。
「十分過ぎる位ぇ、理解してるよ(笑)‼」
優紀のお陰で、此の冷え冷えだった西門邸が、血の通った温かみの在る西門邸に変貌した。
だから、優紀の遣りたかったで在ろう翻訳の仕事を許して遣った。
だが、あきらには、俺の企みが優紀に知れた事は、突っ込んで於いた。
T4だけで、女子会をして居るという同じ日に…。
俺は、あきらだけをメープルのラウンジのVIPルームに呼び出した。
下手に誰かに聞かれても困るし…よ。
で、あきらには、一言、言って遣った。
「あきら…。
今回は、優紀が、遣りたがって居たから、翻訳の仕事を許して遣ったけど…な。
あれは、ねぇだろ?」
あきらも、神妙に、申し訳無さそうに、謝って来やがった。
「ほんとに悪かったな。
普段の俺なら、ぜってぇ遣らねぇ様なヘマを遣っちまったから…よ。
で、あれから、大丈夫だったか?」
俺は、本気じゃねぇ睨みをあきらにしながら、話しして遣った。
「優紀が、素直に俺に飛び込んでくれたから、今回は、あきらを許して遣るよ。」
で、あきらは、心底、ほっとしてやがった。
否、顔付きに出てやがる。
こんなあきらを見る事は、こんなに近ぇ立場の俺でも初めてじゃねぇだろうか?
冷静沈着で、冷静に物事を動かして行くあきらが…?
の俺だった。
だからだろうか?
其れ以上、あきらに突っ込め無かった俺が居たのは確かだった。
「そうか…。
其れは、良かったよ‼」
「ああ。」
態とじゃねぇだろうがな?
まあ、優紀が、素直に俺に飛び込んでくれたから…。
今回のあきらの不始末は、大目に見て遣ったが…。
そして、1年後には、俺と優紀は、婚約発表をして、更に、その1年後には、俺と優紀は、結婚して、優紀は、『西門優紀』と、成った。
此れで、決定だな‼
此の西門家にとっても、西門流にとっても、一番は、俺自身にとっても…。
優紀は、もう、逃がさねぇ存在、何だよ‼
覚悟して於けよ、なぁ、優紀っ‼”
fin